2010.4.8.
元々、体内に存在するポリオウイルス
そこへ大量のポリオウイルスの塊である生ワクチンを投与したら、どうなるでしょうか。ウイルスが大量にやってくれば、
免疫としても黙って見過ごせません。
過剰に存在する異物に対しては、中和抗体がつくられます。中和抗体というのは、ただ単純に抗原にくっついているだけですので、それでウイルスが破壊されるわけではありません。
問題は、この抗原・抗体複合体がどうなるのか、ということと、抗体をつくるのに、免疫が動員されてしまう、ということです。
前者の問題は、今日は棚に上げます。
さて、抗体をつくるB細胞に、「働け!」と指示するヘルパーTh2細胞と、キラーT細胞に、ウイルス感染細胞を「やっつけろ!」と指示するヘルパーTh1細胞は、お互いに勢力の「食い合い」をします。Th1が勢力を増せば、Th2は衰え、逆もまたそうなります。
免疫力が、「楽勝」で余力十分であれば、何の問題もありません。
ところが、結構、カツカツでその日暮らしをやっているところへ「ほら、抗体つくれ、ワクチン来たぞ!!!」とやられると
たまったものではありません。 普段、厳しい戦いを演じているところへ、余分な仕事をさせられるのです。予防と言えば聞こえはいいのですが、免疫システムが、「今、目の前にある危機」に対処している劣勢の状態の時に、とりあえず、今は大人しくしているポリオの抗体をつくれ、というのは、余りにも酷なのです。このくそ忙しい時に、勘弁してよぉ~~~ と、免疫は悲鳴を上げます。
どうするのでしょうか。
他の仕事の手を抜くのです。決まった戦力を、どう振り分けるか、という問題なのですから。
こうして、抗体つくりに精を出すと、ヘルパーTh1勢力は弱まり、キラーT細胞は、サボるようになります。そのとき、何もなければいいのですが。たまたま、ウイルス感染細胞の増殖を辛うじて止めているギリギリの状況だったとしたら、キラーT勢力の引き揚げにより、ウイルスは活発な増殖モードに入ることもあります。
何のことはない、余計な抗体をドカドカ無理矢理つくらせたために、ウイルス感染細胞を殺すべきキラーT細胞にエネルギーが廻らなくなってくると、元々いたウイルスが増えるのです。
かくして、ウイルス感染症の発症となります。
1980年を最後に、ポリオの自然感染は発生していません。ところが、生ワクチン接種者が感染を起こすことは後を絶たず、また、更に具合の悪いことに、ワクチン接種者の排便中に、強毒性のウイルスが含まれており、二次感染する人も後を絶ちません。 一般に、弱毒化、ウイルスの毒性を弱めた上でワクチンにし、その弱毒株が、再び、強い毒性を持ったものをリバータントといいます。 この再強毒化が起こったのかもしれませんが、元々、体の中にいたウイルスは、当然、野生の強毒性です。誤解のないように念押ししておきますが、強毒性の病原体は体内に多種大量に存在し、普段は異常増殖せず、病気をおこしません。ところが、ひとたび異常増殖すれば、強い毒性をもつ可能性があります。
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