このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。
TOP > 手洗いアルコール消毒は感染症対策の基本なのでしょうか。
駅でも電車内でも盛んに繰り返されるフレーズですのでほとんどの人がお聞きになられているでしょう。 「手洗い アルコール消毒は感染症対策の基本です」 これに「咳エチケット」も加わります。感染症対策といっても、冒頭に新型コロナウイルス対策に関するご協力のお願い、という前提条件がついていますので、ここで言う感染症対策の基本というのはあくまで新型コロナウイルスに対する対策としての基本という意味です。
2009年の新型インフルエンザ騒動の時には「うがい、手洗い、マスク」の励行が声高に叫ばれ続け、そんなものでウイルス感染は防げないと主張した人々は私も含めてバッシングを受けたわけですが、そんなこと言ってるのは日本だけだぞ、という常套手段を用いるうちに、後日「我が国固有の風習であり特に科学的根拠はないため今後は推奨しない」ということで落ち着きました。つまり、「うがい、手洗い、マスク」はもっとも大きな声で流布された「デマ」だったわけです。 今回は、「うがい」は復活せず。 これは当然です。気道粘膜に接触した瞬間に、感染する時は感染するのですから後からうがいをしても感染防止にはなりません。 マスクは咳エチケットと言葉を変え、感染は防げないもののくしゃみをするならしておいてください、と妥当なところに落ち着いています。俄然、復活してきたのが手洗いと、新たに加わったのがアルコール消毒です。ただし、インフルエンザ感染予防に手洗い、アルコール消毒と言ってるのではありません、新型コロナウイルスに対してそうだ、と言われているわけです。
今はインフルエンザウイルスの大流行の季節です。空中に長時間漂い、電車であれば車両の中に一人でも感染者がいれば、それも自覚症状がまだないような感染者がいるだけで全員がインフルエンザウイルスを浴びることになります。インフルエンザウイルスにはエンジンもプロペラもなく、ガス化したりインフルエンザウイルス自体がエアゾル化して空気に溶け込む様にして拡散するわけではありません。あくまで飛沫核などに含まれる状態等で漂っているのですが、長時間漂うということは空を飛んでやってくるようなものです。 (実際に、シベリアやアラスカから鴨の体内に宿り、空を飛んでやってくるのですが、ウイルスが生き物の体内ではなく直接、偏西風にのって日本本土を空爆というようなことはありません、、 と思います、たぶん。絶対ないとは言えませんからね、でもたぶんないでしょう) 息を吸えばたちどころに空気と共に気道に入ってくる言ってみれば空飛ぶインフルエンザウイルスに対して、手を洗ったところで意味はありません。 B29の本土空襲に備えて竹槍訓練をしたのと同じことです。 ですので、インフルエンザ大流行の時期に手洗いとアルコール消毒だけやっていたら、ほぼ無防備であるのと同じです。 新型コロナウイルスが問題といってもインフルエンザウイルスの方が遥かに大きな脅威なのですから竹槍を強調し過ぎるのは問題です。感染症対策の基本ですを繰り返し聞いている内に、どんな病原体に対しても感染症対策の基本と思ってしまう人がでてくるかもしれません。
梅毒の場合は、感染後しばらくしてから数週間ほどの活動期の間と進行期になってから、感染者の体から菌がでてきます。これが方々に付着しており、細菌ですから脂質の膜をもっておりアルコール消毒で効率よく死滅してくれます。手洗いとアルコール消毒が重要な例です。 酵母はアルコールに耐える能力が高く、アルコール発酵によって周囲のライバルを死滅させても自分はある程度生きていますが、あまりアルコール濃度が高くなってくると酵母でさえ自分でつくった「毒」で死んでしまいます。酵母醗酵や乳酸発酵の食品が古代から利用されてきましたが、多くの細菌がアルコールや乳酸で死滅するので消毒になり腐らないで長期保管できるという一面もあります。
ウイルスの場合は、アルコール中で完全に安定なものもいればウイルス粒子の一番外側を覆っている脂質の膜を失うものもいます。 脂質の膜をもたないタイプのウイルス、よく引き合いに出されるノロウイルス等はアルコール消毒しても全く平気ということです。インフルエンザウイルスも新型コロナウイルスもどちらも脂質の膜をもっています。ところが、インフルエンザウイルスは空中に漂う時間がかなり長いために空爆で襲ってくる相手に手を洗う地上戦で防御しても防げるものではない訳ですが、新型コロナウイルスは遥かに滞空時間が短く、拡散する距離も限られるため、感染者がいた空間の空気中からはすぐにウイルスが検出されなくなり、むしろ「落ちている」か「付着している」ものが多くなるので手洗い+アルコール消毒を励行ということになっています。
本当に意味があるのかはわかりません。実際に新型コロナウイルスが床に落ちているのを手で拾って、その手で顔を撫でまわして感染するかどうか実験した人の話は聞いたことがありません。一方、空中を漂う時間は様々な検証が行われ、まるで記録を競うように、いや実は〇〇時間も漂っていたぞ、と滞空時間記録の更新が相次いでいます。そんなものは条件が違えば、データも違ってくるのが当たり前で、大体の目安にするしかないのですから、ざっくり1~2時間はまずいるんだろう、で、たぶん、数時間くらいはいると思っていた方がいい、という辺りでしょう。人がやたらと顔を手で触る、とか目からも感染することがある、とか、個々には検証結果が報告されています。では総合的に人の日常環境の中での行動でほんとに手を介して感染するのか、手洗いやアルコール消毒で防げるのか、それはわかりません。逆に、感染防止効果がない証明もありません。だったら手軽にやれることはやっておくか、それが妥当な判断になるのでしょう。なお、アルコールでウイルスが失活という話がよくありますが、アルコールより遥かに強力な薬品で化学処理して通常の仕組みでは感染しなくなったウイルスでさえ、トランスフェクションという現象により感染することがあります。ワクチンの安全対策で大きな問題になることです。不活化したから大丈夫かというと、そしてマウス1000匹に接種しても安全だったと思っても、ニワトリ数十万羽に接種したら不活化ワクチンに含まれていたウイルスゲノムが細胞内に取り込まれ、感染力をもつウイルスが飛び出してきたという有名な事件がルイジアナ州で発生したことがあります。これが爆発的な二次感染を引き起こしましたので、発生率が低くても急速に感染拡大すれば大きな問題になります。むしろ発生率が低いために多少の安全性テストではリスクが検知されなく、大量に実使用すると初めて感染大流行というやっかいな問題です。ワクチンの場合はウイルスがいないところへウイルスのゲノムを「撒く」わけですから単に不活化しているというだけではなく、更に厳密な安全性の検証が必要です。 その点、消毒は効かなかったらそれまで、効けばやってよかった、ということになります。 アルコール消毒で新型コロナウイルスが失活するのか厳密な検証は難しいのですが、少なくとも飛沫核の分散にはなります。ウイルスは一度に大量の粒子が同時に粘膜に付着しないと感染が成立しませんので、飛沫核に塊として存在するウイルスを散らすだけでも結果的には感染力が落ちる効果を期待できます。たとえばアルコール処理したウイルスをマウスに強制感染させる実験系などでは感染力が落ちるように見えたりします。 そのこととウイルス単体そのものが本当に変性しているかは別の問題なのですが、要は感染しにくくなればいいのですからこの際、厳密な検証をすることよりも実用的な手法で妥当そうなものはやっておくという考え方には納得感があります。
なおアルコールよりも石鹸の方が威力は大きいのですが、石鹸は残りますから蒸発するアルコールの方が使いやすいです。また石鹸は強力な作用を発揮するまでに時間がかかる、30秒くらいかかることもあります、アルコールの脂質に対する作用は「一瞬」です。また石鹸の場合、温度が低いと威力が落ちる、水に溶けないと効果がないのですが水の中の塩分が多いと効果が落ちるといった弱点もあります。とことん消毒するなら強力な界面活性剤、たとえばSDSなどを用いるとどんなウイルスであろうがたんぱく質の立体構造が崩れてしまいますので通常の感染はしなくなります。ところが強力な界面活性剤になるほどそれ自体が人体に有害ですから、水に溶け、すぐに揮発して後にの残らないアルコールが一番使い勝手がよい、というところです。ちなみに私は花粉症がほとんど治ったのかという位に改善してきているのですが、たまにくしゃみがでることがあります。なのでガーゼやウレタンのマスクをしていますが夜、お風呂に入る時に温かいお湯で純石鹸(脂肪と苛性ソーダだけで作った石鹸)を刷り込んでお風呂を出る時に洗い流し、干しておいたものを使っています。
少なくともインフルエンザウイルスを手洗いで予防というよりは新型コロナウイルスを手洗い+アルコール消毒と言ってる方が根拠性はありそうですが、実際に感染しているケースはある程度以上の時間、至近距離にいて感染者の呼気を吸ったと考えられる場合です。主な感染経路を遮断していることになっているのかどうかは疑問が残ります。害はないんだからやっておきましょうと言われるとやめておけという反論をするまでの根拠はない、という落としどころでしょうか。