このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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TOP > インフルエンザワクチンの予防効果とリスク
インフルエンザワクチンに関するお医者さんのコメントがネット上にあふれ始め、概ね「感染予防効果はない」ことについてはコンセンサスが得られているようです。
感染予防は期待できないが、では重症化防止はできるのか、が争点なのですが、発症を抑える効果についての言及も目につきます。
メディアの方が書かれるものには未だに感染を防ぐにはワクチンを、という論調が残っています。欧米でも感染予防はワクチンが推奨されている、と書かれたものもあり、実際その通りですが、欧米で広く使用されるワクチンは日本のものとは成分が異なります。 日本のものは血中中和抗体を誘導するだけで若干、微熱がでるかどうかの副反応しかありません。 欧米のものは免疫刺激が強い毒性物質を日本よりも多く含む傾向があり、免疫刺激による予防効果が期待できるかもしれない反面、副反応も強くでる傾向があります。 粘膜に直接塗布するタイプは感染予防効果を発揮するものもあります。 日本では生産されていませんが。 少なくとも、日本で普及しているものに限って考えるならば、もう今時、インフルエンザワクチンに予防効果はなしで決まり、でしょう。 実は、絶対に予防効果がないわけではないのですが、基本的にないと考えてそう間違いはない、ということでいいでしょう。 「感染予防効果は期待できない」 このあたりが妥当な表現ではないでしょうか。 「感染予防効果はあまり期待できない」でもいいかもしれません。 絶対にこうだ! とはいえませんので。
発症を抑えるかどうかについては検証自体が難しいのですが、仮に発症を抑えるとすると問題があります。インフルエンザは感染すれば、本人が自覚する前に他人にウイルスをまいてしまいます。インフルエンザがやっかいな大きな理由の一つがこのポイントです。 感染すれば発症前に他人にうつるのです。感染した本人が感染していることに全く気付かない無症状の段階で、まだ一度もくしゃみも咳もしていない段階でもうウイルスは感染者の体から飛び出し、他人にうつってしまうのです。 すぐに発症しない人が本当に増えると、自分は感染しているという自覚がなく外出し、人ごみにも集まり、どんどんウイルスをまくことになります。 この問題は簡単にいい悪いが言えるものではありません。 たとえば学校の先生がインフルエンザに感染したら症状がすぐに出て休んでもらわないと益々多くの子供たちにうつしてしまいます。ワクチンに発症抑制効果がもし本当にあるなら、その先生が感染していることに気付くのが遅くなるのでそれだけ多くの子供が感染することになります。 ワクチンの本来の目的は「伝播速度を遅くする」です。 大規模な疫病による壊滅的な打撃を和らげるのがワクチンのもともとの発想であり、寝ていれば大抵、治る病気にワクチンをうつのか、というそもそも論もあります。 今日の日本人のような個人主義的な発想とは無縁のものだったのです。 日本では、伝播速度についての議論がほとんどなく、目の前の一人の人をどうするか、ばかりに耳目が集まります。感染を防ぐならいいのですが、感染を防がず、他人への伝播を遅らせることもなく、症状がでるのが先延ばしになるのはワクチンの設計としては最悪なのです。
重症化防止についてはできるのであれば「意味あり」となります。 問題は重症化防止の証明ができていない、ということです。 統計データは存在し、ワクチンを接種した人と接種していない人では明らかに接種していない人の方が重症化や合併症発症リスクが高いのです。 ほらエビデンスがある、と主張されてきたのですが、「接種していない人」の中には「接種できなかった人」が多数含まれており、元々体力が落ち、あるいは何か持病があり、重症化リスクが高い人やすでに症状がでている人はワクチン接種不可になりますので、当然ながら「ワクチンを打てなかった人」ほど重症化する人が多くなり、これを「ワクチンをうたなかった人」とカウントしているのです。典型的なバイアスがかかっているわけで、こうした統計データをもって重症化防止効果が証明されています、というのはかなり無理があります。なので厚労省も「重症化防止を目的とします」としたわけです。 目的とする、ですから。 できるとは言わなかったのです。
ではもっと統計データを集めればいいのかというとそう簡単にはいきません。インフルエンザの確定診断は結構、面倒なのと重症化患者は様々な合併症をもつ傾向があり、何が主因だったのか、合併症が重篤となってそのあとから日和見的にインフルエンザが感染し悪化していったのか、正確な解析は研究レベルでやらないとクリアなことはわかりません。 また重症化する人の総数がそもそも少ないので、というより本当に何人いらっしゃるのか、確定診断を受けない人が大量にいらっしゃる「はず」ですので、実際よくわからないのですが、感染する人の人口からすればきわめて稀に重症化する人がいらっしゃる、という状況です。つまり統計データを集める際の「人数」は相当多くないと精度がでない、大人数の統計を取るとなると、今度はどこまで正確で厳密な確定診断をそんな大規模調査で下せるのか、とんでもない予算が必要で、現実的には無理ではないか、となるのです。
くれぐれも誤解ないようにお願いします。重症化防止効果がないと証明されたのではありません。
一方、重症化防止に寄与する科学的根拠が見えません。血中中和抗体が血液中に侵入したウイルスの表面を覆うことが予想されますが、中和抗体はただ結合するだけでウイルスは破壊されません。中和抗体だけでどうやってウイルスを無力化するのか科学的な説明ができません。中和抗体は保護抗体と呼ばれかけた時期もあります。欧州のワクチンメーカーが日本のワクチンを攻撃する際についてくるポイントの一つがここです。日本のワクチンは中和抗体しか誘導しないから効果がありませんよ、と。
ワクチンの効果判定を行う臨床試験の設計は私も何回も経験しましたが、かなり難しいです。あるとき、英国で感染者の鼻水を健常者の鼻に垂らす強制感染実験(日本ではできません、だから開発は海外でやるのです)によって感染予防効果を認めたのですが、他人の鼻水がタラリと自分の鼻に入るという状況が一般にあり得るのか、、、??? ウイルスは人に感染し、感染を繰り返したり、重症化する過程で感染力や毒性が強くなる傾向があります。大流行しているウイルス、つまり実戦経験を重ねて人間の免疫網との闘いに勝ち抜き百戦錬磨でやる気満々となっているウイルスと研究室で保管していたウイルスを突然、たたき起こして寝ぼけ状態で感染させたのでは全く「パワー」が異なります。 実験環境と現実の流行とはまるで条件が異なるのです。 ちなみに、その効果のあったワクチンを使わないのか、というと、実はインターフェロンをワクチンエンハンサーとして使ったので、そちらの効果が大きかったのです。 ワクチンそのものの効果もあったのですが、インターフェロンを鼻に垂らす承認を取る方がよっぽど大変となり先送りになりました。 私は昔はよく風邪をひいていたので予防にはインターフェロンを使っていましたが、そんなことは海外の仕事が当たり前で新薬開発のサンプルをいつも運んでいたから可能だったのであって、国内でそんなことを合法的にやるのは無理だと思いますし、投与量や投与間隔を間違えたら本物のインフルエンザよりひどいことになるかもしれませんので、忘れてください。(インフルエンザの症状の多くはウイルス刺激によって放出されるインターフェロンによるものです。大量投与は本物のインフルエンザよりひどいことになります)
ちなみに海外事情でいうと、欧米諸国でもインフルエンザワクチンを接種しています。ただし、日本のものとはタイプが異なります。 生ワクチンはウイルスそのものを用いますが、インフルエンザに用いられる不活化ワクチンは、変性したウイルス自体には免疫刺激作用がなく、接種すると直ちに分解されて消滅しますので、必ず「アジュバンド」と呼ばれるものを添加します。免疫刺激作用がある毒物や体内に永く留まるもの、免疫細胞が食作用でとり込みやすい物質など、いくつもの機能を担う複数の物質を混ぜてつくります。 数年前に日本に強力に売り込まれた英国製のワクチンは細菌毒素であるリピドAの化学修飾物を大量に加えてあり、この物質単独でも強い免疫刺激効果がありますから、接種後しばらくは「感染予防効果」を期待できます。 その代わり、発熱だけではない副作用も様々に発症するリスクがあります。 同じ物質が子宮頸がんワクチンにも含まれており、副作用との関連が議論されてきました。 日本で使われてきた国産ワクチンにもアジュバンドは入っておりますが、英国風ほど強烈なボリュームではありません。 当然ながら英国メーカーは、日本のワクチンには感染予防効果はないが、うちのはあるぞ! と売り込んできました。 つまりワクチンといっても、日本と欧米では中身がまるで違うのです。
では日本のワクチンは予防効果は期待できないものの、安全なのでしょうか。 さきほどの毒物を大量に含む海外製のものより安全性は高いと考えられます。
では、ワクチンを接種することによってインフルエンザに感染するというリスクはあるのでしょうか、ないのでしょうか。 不活化ワクチンだから接種された人にワクチンそのものが感染してしまうリスクはゼロなのでしょうか。
先進国では、動物用のインフルエンザワクチンは禁止されています。一時はあれほど高病原性インフルエンザがニワトリなどに流行し、鳥インフル問題(インフルエンザはもともと鴨という鳥のウイルスなのですが)が大騒ぎされた頃でも厳格に禁止されていました。 それは危険だからです。 ではなぜ人にはうつのでしょうか。 ここには大きな「矛盾」があります。
不活化ワクチンにはウイルスゲノムが入っています。細胞にとりつく感染装置は壊してあるので、通常のルートで感染することはないとされています。 ウイルスをバラバラにしてゲノムを抜くと、ウイルス粒子の形をとどめるものよりもはるかに抗原性が低下してますます役に立ちません。 なので生ワクチンを使えるなら使う、使えないとなると、次は感染装置を薬剤処理などで壊した不活化ワクチンという順番になります。
ところが不活化ワクチンであっても通常のルート以外の感染ルートが主に二つ知られています。
一つはトランスフェンクションです。 私もよく実験でやりましたが、シンプルに細胞と遺伝子を一緒にするとものすごい低い確率ながら、遺伝子が細胞の中に入ってしまいます。 実験の際にはカルシウム処理というのを行い、細胞膜をふにゃあ~~ とさせることで、もっと効率よく遺伝子に細胞膜のフリーパスをやらせます。 トランスフェクションにより遺伝子が「スポッ」と入ってしまうということは起こり得るのです。 どんなに低い確率であっても、何百万人にもウイルス遺伝子を含むワクチンを接種すればウイルスの遺伝子が細胞内に入るリスクが全くないとはいえないのです。 しかもワクチンに添加されているアジュバンドの中には細胞にとり込まれやすくする物質も含まれています。 細胞内に入ったウイルス遺伝子は通常は直ちに分解されますが、生き残ればウイルスゲノムを基に細胞内で完全な感染力をもつウイルス粒子が「生産」されてしまいます。
もう一つのルートはエンドサイトーシスです。 これはもっとリスクが高いのです。たとえばエイズワクチンの開発が失敗続きだったのには理由があります。 エイズウイルスを外から眺めるとびっしりとGP120という糖たんぱく質のスパイクが突出しています。 あまりに目立つのでこれを抗原にワクチンをと誰もが考えるわけです。 ウイルス遺伝子は入っていません、糖たんぱくにアジュバンドを加えて投与します。すると抗GP120抗体ができてくるのですが、この抗体、血液の外にはあまりでないIgGというタイプの抗体で、抗原に結合するだけの中和抗体です。 ここで中和抗体を誘導しました、ワクチン効果がありました、とやってしまうのですが、大きな問題があります。 もしこの状態でエイズウイルスが侵入してくると、血中中和抗体によってびっしりとウイルス粒子が覆われます。するとエイズウイルスは免疫細胞などの攻撃を回避します。 目につくウイルス独自の物質GP120を抗体が覆い隠してしまい見えなくなるのです。 そして抗原に結合した抗体は立体構造が変化することでエンドサイトーシスと呼ばれるメカニズムが働き細胞内にとり込まれてしまいます。 抗体ははずされ、細胞外へ放出されて再利用、抗原は通常は分解酵素でバラバラにされるか、されない場合はそのまま溜めておかれます。 この場合も通常はウイルス遺伝子が動き出す確率は低いのですが、ごく稀であってもウイルス遺伝子が活動してしまうと細胞内で大量増殖し、飛び出していきます。つまりワクチンによって感染リスクが高くなるわけです。 これではまずい、とその後、欧米ではワクチンの効果判定として血中中和抗体の誘導ではだめ、という方向へシフトするのですが、日本は相変わらず血中中和抗体の誘導をワクチンの効果判定基準とするため、効果は証明されたのに、感染は防げないではないか、となるのです。 エイズワクチンは結局、実用化されなかったのですが、インフルエンザ不活化ワクチンの場合、ワクチンそのものにインフルエンザウイルスのゲノムが入っていますので、ワクチンそのものによる感染リスクも理論上は否定できません。
鳥のインフルエンザワクチンが禁止されている理由ですが、事故があったからです。 1990年のこと、当時、高病原性インフルエンザの危険性について警鐘を鳴らしていたのですが、マスメディアの関心を呼ぶことはありませんでした。1990年ですから。 パンデミック騒動など全く無風な状態だったころです。 まだ人間界には流行していないものの、H5N1型など高病原性のインフルエンザがやがてヒト型に変異したらとんでもないことになる、疫病対策の基本は隔離政策ながら、このウイルスは伝播力が強いので大変です。という話をしていた矢先、米国ルイジアナ州で養鶏業者が飼育していたニワトリ数十万羽を対象にH5N1型ウイルスの不活化ワクチンの試験的な接種が行われ、その中の数十羽から感染力をもつウイルスが飛び出したのです。こうした事件を踏まえた上で、鳥インフルエンザワクチンは多くの国で禁止されているのです。 その後、流行をおそれる養鶏業者がワクチンを購入、接種したためインドネシア、ベトナム、香港などで次々に高病原性インフルエンザが発生します。日本にも不法輸入した業者がいましたが摘発され大量発生する前に抑え込めました。あわや大発生という寸前までいったのです。
2012年の冬には中国南部に建設された欧州メーカーの巨大ワクチン工場、世界の全ワクチン製造能力の総合計の3倍にも相当する巨大工場です。 そこで製造されたヒトH5N1型ワクチンが大量出荷される手前までいってましたが、あのまま本当に高病原性ワクチンを大量に使用する、つまり高病原性ウイルスのゲノムを多くの人の体内に投与するということが行われていたら、とんでもない事件になっていた可能性があります。 流石に、何を考えとるのか! とこのプロジェクトは中止になりましたが。
では、実際にどうすればいいのでしょうか。
元気な人は乾燥に気をつけるのが現実的です。ウイルスは湿気に弱いというのですが、水の中にもウイルスはいます。 野生のカモが泳いでいる池の水にはウイルスがうじゃうじゃいます。 濡れたらウイルスが消える、わけではありません。 壁に付着しているウイルスなどの感染力を測定することで、湿度が高い方がウイルスが速く失活するという実験データはものすごくたくさんあり、間違いではないでしょう。 ただ実際にはウイルスそのものが湿気に弱いわけではありません。 部屋の壁に付着したウイルスは室内の湿度が高いほど早く失活する、これは実際にそうですし、壁に付着している人間の手が分泌する分解酵素の活性が湿度による影響を受けるのでしょうが、ともかく理屈を棚にあげて、眠る際には部屋の湿度を保つように私もそうしています。 特にホテルに泊まる時は問答無用で全館暖房が入り乾燥することが多いのでバスタブにお湯をはり、マットのタオルをお湯につけながら広げたりします。 また枕元には水を入れたコップを置き、少しずつのんでます。夜中起きたら必ず少し水をのみます。 人間の側の粘膜が乾燥したらやばいわけです。 暖房入れ過ぎて乾燥してたら本末転倒、湿気の確保、水分の確保は必須です。
重症化により命を落とされる方がでないように。 それは体力の落ちている方などをどれだけ普段からケアできるかにかかっています。 ワクチンをうっておけばいいんだ、という話ではありません。 どこまでちゃんとケアができているのか、一人ひとりの命や生活がどこまで暖かく見守られているのか、そっちが要です。