このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。
TOP > 水素風呂と臍帯血を一緒にしてはいけません
2017.7.13.
ネット上を賑わす3つの事件が
すべてクロスするクリニックがあります。
私どもとは何の関係もなく
訪問したこともありませんが
患者さんから、「御評判」を
聞いたことはありますので
HPを見たことはありました。
なんでも、がん患者さんに
水素を溶かし込んだ? お風呂に
入っていただく、というものを
やっておられます。
これがなぜが、水素免疫ナントカ、、、
「免疫療法」の名前がついているので
私どもも、「なんで、、、???」と
絶句していたのです。
免疫とは何の関係もありません。
私どもは、がん細胞を特異的に傷害する
唯一の存在として知られるNK細胞を
がん治療に用いる治療に関連した
サービス業(医療行為はやっていません)
なのですが、がん細胞を殺せるNK細胞を
がん治療に用いるのは、まずこの時点では
理屈にあっているわけです。
もちろん、活性や数をそろえないと
意味はありませんが、どれくらい
そろえれば効果がでるかは
既に米国で実証済ですので
その基準を超える活性と数を
そろえています。
筋は通しているのです。
水素と免疫、水素とがん ???
自分に理解できないものを頭から否定すると
標準治療礼賛派と同じになってしまいますが
それにしても、無茶苦茶な作り話にしか
聞こえません。
お風呂はいるのは自由ですが
がん治療と言うのは無茶でしょう。
がんという病気がやっかいなのは
本人の正常細胞の大集団の中に
本人のがん細胞が紛れているからであり
温度を上げ下げしようが、水素がどうであろうが
糖質を制限しようが、何をしようが
がん細胞だけに打撃を与えるものなど
ありえません。
温度については、がん細胞と正常細胞の
感受性は同じです。
本人が生きていれば、がん細胞も無事
がん細胞が死ぬほど熱をかければ本人も
無傷ではすみません。
糖質は逆です。
一般に、がん細胞は、糖分の取り込みが
少ないので、糖分の集積部位を映像に
捉えるPETには、多くのがん細胞が
映らないのですが、(正常細胞が活動
していない領域に、がん細胞が進出していると
がん細胞だけが、糖分を取り込んでいるので
PETに映ります) なぜか、これが
逆にとらえられています。
免疫細胞など、がん細胞よりも
圧倒的に糖分の取り込みが多く
お肉も大好きですので、
がんと闘う免疫を強くしていくなら
糖質やお肉は、必須アイテムです。
さて、この水素何とか、違法ではありません。
少なくとも、安全なものではあるのでしょう。
爆発とかしなければ。
この治療を有名人が受けていたから
というので問題にする意見があるわけですが。
受けて問題ということはないでしょう。
お金と時間の無駄とかいっても
それは、お金と時間を使う人が
考えることなので、自分のお金を
出していない人が、横から文句を
言うのはおかしいのです。
標準治療を受けるタイミングを逃した
というのですが、どんなに早期がんと
思われても、がん細胞が飛び散っていることは
あります。 早期がんを標準治療で治せる
とは限りません。 事実上の完治もあるから
話は複雑なのですが、後から、ああだ、こうだ
といっても、真実はわかりません。
ただ、ずいぶんと進行が早かったという場合は
かなり早い段階から、がん細胞は
飛び散っていた、と考えます。
また、がん細胞が、飛び散っていた場合は、
標準治療を早く始めれば始めるほど
副作用が重くのしかかるだけです。
しかも、手術によって、細胞増殖信号が
大量に放出され、正常細胞が爆発的に増殖し
傷を修復するのですが、
正常細胞が爆発的に増えている時
飛び散っているがん細胞も当然
爆発的に増えているのです。
増殖信号物質のシャワーを受けるからです。
がん細胞が飛び散っていなければ
手術で事実上の完治、飛び散っていれば
手術によって、飛び散っているがん細胞は
爆発的なスピードで増殖を始めます。
放射線、抗がん剤で、活発に増殖中のがん細胞の
多くが、死んでくれるのはいいのですが
中途半端に遺伝子に傷がついた状態で
生き残ったがん細胞は、猛烈に悪性度を
増してきます。
飛び散るがん細胞が存在するのに
標準治療を早く始めれば、
余命は縮み、一方、
飛び散る前に標準治療を受け
何年も生きていられる
両者の平均値を、延命効果のように
言ってのけるのですが、
中身は、全く、真逆の効果を
つまりプラスとマイナスの数字を
混ぜてしまったに過ぎません。
統計処理に基くエビデンスには
こうした問題がいくつもはらんでいます。
うちはシンプルです。
危険度がわからないがんの場合
原則、手術していただきたいのです。
飛び散るがんである可能性を強く
疑っている場合は、手術不能になる
前に、早くやっていただき
ANKの培養を済ませて凍結保管
していただきたいのです。
ほんとにわからなければ
手術して、病理検査の結果をみてから
危険度を判定し、飛び散る性質を獲得
しているがんなら、ANKをそこで
すぐに培養して、治療もする。
標準治療と水素なんとかを同じ次元で
論じるのは失礼にあたりますが
標準治療には、メリットとデメリットの
両方があり、水素なんとか、には
効果もないのでしょうが、
たぶん、害もないのでしょう。
どちらがいい、どちらが悪い、
とは一概に言えないのです。
私どもは、水素なんとかやるなら
ANKをと言いたいわけですが。
さて、水素なんとかと
有名人の治療の話だけなら、
文句を言ってる人々も
言い過ぎに聞こえます。
ところが、このクリニック、他人の臍帯血を
投与してしまったそうです。
これは大問題です。
水素風呂と同じ次元で論じてはいけません。
まず違法行為なわけですが
実際に、危険な行為です。
もしウイルスとかが混入していたらどうするのか。
拒絶反応の問題もあるかもしれません。
また、臍帯血には、幹細胞がいます。
胎児由来の様々な細胞もいます。
こういう細胞は、他人の体内で
何年も生き続けることがあります。
女性の体内からは、かつて妊娠した際の
胎児の細胞がみつかります。
自己免疫疾患が女性に多い理由のひとつに
胎児という他人の細胞が、体内で活動している
ことを理由とする説もあるようです。
子宮の中に、毛髪が生えたり、歯が生えたり
するのは、卵子が異常な分化誘導を起こしたからと
考えられていますが、幹細胞をやみくもに
体内に入れると、何をするかわかりません。
NK細胞は、成熟した細胞で
今さら、他の細胞に化けたりもしませんし
残り細胞分裂回数も少なく、
がん患者さんの末梢血中のNK細胞は、
あと数回しか細胞分裂しません。
こういう細胞だからこそ
安心して、治療に使えるのですが
幹細胞は、「化ける」のが仕事の細胞です。
大きな腫瘍も、がん幹細胞から始まると
考えられていますが、がん幹細胞は
正常な幹細胞とよく似ています。
幹細胞を異常化させるとがん幹細胞に
なるリスクが高いのかもしれませんし
実際に、iPS細胞は、がん幹細胞に化けやすい
事が知られています。
他人の臍帯血を治療に使うのなら
未知のことも含めて、様々なリスクが
あり得るので、よっぽど、治療を行うべき
理由がなければやってはいけません。
法律上も、事前に、厚生労働大臣の
「事実上の」承認が必要とされています。
手続き上は「届出」ですが
途中のプロセスが承認と同様であり
国に停止権限があるので実態は
事実上の承認です。
他人の臍帯血を用いるのは
iPS細胞を治療に用いるのと
同レベルの危険なものと
認識されているのです。
なお、臍帯血をがん治療という報道が
ずっと続いているのですが、
現実味はありません。
(古典的な骨髄移植と類似する治療というのはありますが)
がん治療と称して、「やってしまった」
医師がいたのかもしれませんが、
実用性はありません。
研究目的で、臍帯血から免疫細胞を
培養したり、誘導したりすることは
ありますが、それでは、実用的な
コストで、「数」を揃えることは
できません。
さて、いろんな話が、ごっちゃに
イメージ化されることがよく
ありますが
水素風呂は、違法ではありません。
法治国家において、法的根拠もなく
勝手に非難すると、非難する方が問題です。
もちろん、名誉棄損に該当します。
もっとも、治療しても、たぶん、
意味はないのでしょうが
おそらく、安全で、害もないのでしょう。
有名人が受けたかどうか、ということは
人の関心を呼びますが、医学的には
有名人も、そうでない人も何の関係もなく
標準治療を受けるタイミングに影響が
でたかどうかの話も、一概に、早く
標準治療を受けることが正しいとは
限らない
白、黒、はっきりしないことを
後から、ああだこうだ、言わない。
他人の臍帯血を治療に使った、、、、
これは、事実上の事前承認なければ犯罪行為であり
しかも、かなり悪質。
ごっちゃにしてはいけない話を
整理すると、こうなります。