このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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2013.3.4.
久々に、レアメタルが話題になっておりました。
以前、主要メディアが盛んに、
中国陰謀説を流しておりました。
中国はレアメタル資源を独占しており
これを武器に、自動車産業やIT産業
特に、今後、需要増が期待される電気自動車分野で
支配力を強める、という類の内容でした。
一言でいうと、
「ただの作り話」です。
資源としては、どこにでもあるもの、なのです。
なお、レアメタルといっても、種類が多く
中国ではほとんど採掘されていないものも
いくらでもあります。
たとえば、液晶用透明電極に欠かせない
インジウム、PCには必需になってきたテルルなどは
カナダに供給が集中しています。
かつて、パソコンはファンの音がうるさく、
会議中にパソコンの電源を入れるなど考えられなかったのですが
今では、ごく当たり前にモバイルPCを使いながら会議を
やっています。 これは、ファンをなくして、テルルを使用する
ペルチェ素子によって、効率よく熱を運びだすことで
可能になったものです。
さて、中国が、牛耳ってるぞ、と言われていたのは
稀土類、文字通り、稀に、土に含まれる物質です。
レアアースの訳を「土」としたのですが、これは、
結構、正確な訳です。
というのは、レアアースは、土があるところなら、
どこにでもあるのです。
わが日本にも、レアアースはごろごろ存在します。
別に、中国に資源が集中しているわけではありません。
海南島の土は、レアアースの含量が、通常より一桁以上高く、
以前、あの島に、ネオジウム磁石の工場を建設する計画を
立てたことがありました。
ところが、中国は、海南島を、高級フェリーのクルージングなど
観光立地としたため、レアアースを掘る、ということにはなりませんでした。
中国では、商売上手な浙江省人のビジネスマンが、レアアース類の
取引を牛耳っておりますが、工場は、概ね、内モンゴルにあります。
モンゴルにレアアースが沢山、埋まっているのではなく、
要するに、未利用の土地が広い、かつて、環境破壊を無視して
精製ができた、ということで、中国が競争力を得たものです。
昔は、米国のモリコープが、この手の金属を独占していました。
掘るのは、米国本国や、モザンビークでも掘ってました。
ところが、環境問題を徹頭徹尾無視の中国が圧倒し始めました。
レアアースは、含量が低いため、大量の原料に対して
膨大な量の硫酸や硝酸をぶっかけ、燃やしたりします。
重金属を含む祖原料にこれをやるのですから、もう
最悪の有毒ガスをまき散らすことになります。
流石に、いくらなんでも酷い、と、あの中国でさえ
環境規制をかけたり、工場への指導を行ったりしたため、
一時、ネオジウムが高騰しました。
鉄ネオジウム・ボロン・コバルト、など、
強力磁石をつくるのにネオジウムは欠かせません。
開発したのは、世界で初めて人工磁石を開発した東北大学であり、
技術も東北大学の系列の人脈で広がっているのですが、
浙江省人は、巧みに、日本の技術を導入し、製造装置は自前で
つくって、日本製の5分の1のコスト、精度要求が厳しい検査装置は
日本製を買い続けます。
内モンゴルで精製されたネオジウムは、楕円形の延べ板のような形状で
カンカン、と鍛錬した後がビッシリついた状態で浙江省へ運ばれます。
酸化はよろしくないので、専用容器に納められています。
年契で買い取り数量をコミットしないと売ってくれないので
何より、まず、ネオジウムの数量確保と、その資金を用意する必要があります。
で、中国による支配はどうなったかですが、値段をガンガンあげたため、
たちどころに、インドを始め、各国で製造が始まり、もはや中国の独占は
崩れています。 この手の資源は、ユーザーが納得する価格で供給する限り
独占を認めてもらえますが、実際に、供給制限や、価格つり上げをやって
しまうと、すぐにライバルが立ち上がってしまいます。
たまに、高騰させないと、業界全体が、「値上げの理由」をみつけられないので
時折、何か、理由を考えては、値段をあげていくのですが、3年も4年も高値を
続けると、どこか別の国で、新しい工場が稼働を始めてしまいます。
何事も潮時が肝心というわけです。
レアアースビジネスは、取れる金属類をどうバランスよく捌くか、ということも
重要です。 どうせ、土をいじって、金属を採るのですが、様々なものが一緒に
とれてしまうのです。 量からいえば、ランタンが、圧倒的に大量にとれます。
これは、ブラウン管に使われるので、かつては、主役でしたが、今は、使用量が
減っています。 中国には、TCLというブラウン管TV市場をほとんど独占している
家電の巨大企業がいますが(日本では、冷蔵庫で気を吐いたハイアールが有名ですが、
中国の家電ナンバー1、といえば、何といってもTCLです。
一時、ヨーロッパのホテルに泊まると、必ずというほど
TCLのテレビが置いてありました)、さすがに、需要は減る一方です。
今日では、ランタンを捌くことを前提に考えていては、プロダクトミックスが
合わないので、捨てる前提で、ネオジウムをどうするかで、生産量が決まってきます。
ほか、サマリウムなど、いくつかマイナーなものを、どう売って、全体のコストを
コントロールするか、です。
結局、私たちが、物質的に豊かなで便利な生活を送るために
かつては、インディオの居留地で、深刻な環境問題をばら撒きながら、
そして、今は中国のモンゴル人居住区、更には、インド、アフリカへと
特定地域の人々を犠牲にしながら、資源開発がすすめられています。
それが地球は一つという当たり前の状況下、環境破壊は全地球規模に
拡散し、汚染は均一化されていきます。
ちなみに、日本の近海の海底には、マンガン団塊がゴロゴロと
転がっています。これは、マンガンだけではなく、様々な金属の塊です。
これを拾ってくれば、土に硫酸や硝酸をかけるよりは、はるかに効率のいい
金属資源となるのですが、ずっと昔から知られているこの資源の宝庫は
誰も手をつけようとしません。
海底の砂を巻き揚げ、環境破壊になる、という意見もあります。
実際には、そういう理由を気にするような人たちが鉱物ビジネスを
動かしているのではありません。そういう私も、かつて鉱物ビジネスを
やっていた時期があったのですが。 資源は、どこにでもあるのです。
いくらでも、掘れば出てくるのです。金でもダイヤでも、いくらでもあり、
石油など何千年、掘り続けてもなくならないのです。
鉱物ビジネスというのは、どこにでも、いくらでも掘ればある資源を
どうやって、一部しかないように見せ、価格と供給量をコントロールするか
ここに儲かる構造の要があるのです。
海底のマンガン団塊をただ拾い集めれば、価格は暴落します。
うまく、仕組みをつくらないと、この業界は動かないのです。