藤井真則のブログ

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2016年08月02日

  

がん, くすり

免疫チェックポイント阻害薬の 副作用は、治験の結果からも報告 されていましたし、原理的にも 当然、予想される帰結です。

誤解ないように申し上げますが、 この薬、新しいメカニズムで登場し、 私どもも今後を期待しております。 かといって、いくらなんでも 夢の新薬というのは言い過ぎです。

薬で、がんは治せないのは「基本原理」 です。
その前に、まず、ニポルマブが なぜ売れているのか、ですが。

処方前の検査が不要だからです。
そして、値段が高いからです。

二つの要因が重なって、 売上は大きくなります。

この薬で次々にがんが治る人が でてくるので、口コミで広がった、、、 のではありません。

免疫チェックポイント阻害薬も 分子標的薬の一種であり、 何も、突然、免疫系の薬が登場したのでは ありません。

ところが、従来の分子標的薬は、処方する前に 検査を行い、分子標的薬の標的物質が がん細胞表面に過剰発現しているかどうかを 調べる、といった検査が必要です。

この検査、簡単にできるとは限らず 保険適用になっている部位の患者さんであっても 処方されないケースの方が多いのです。
しかも、ニポルマブ程、値段は高くないので とんでもない売上にはなっていなかった ということです。

従来型の分子標的薬は、悪性度の高いがん細胞が過剰発現する物質を標的にしますが標的物質は、同じ部位のがん細胞であっても過剰発現している場合もあれば していない場合もあり、 正常細胞にも存在しています。
患者さんごとに、体内のがん細胞が 標的を過剰発現しているかどうか 調べないといけないわけです。
正常細胞からも標的物質がでてくるため血液検査で調べられる場合もありますが それは例外的であり、 多くが、病理検査を前提としているためそう簡単にいつでも検査できるわけでは ありません。
さて、「免疫」という言葉がついているために「やっとホンモノの免疫治療が登場した」と言うキャッチフレーズが盛んに用いられましたが従来から、欧米では、免疫システムとの協調を前提にした分子標的薬が主流になっており免疫チェックポイント阻害薬も分子標的薬の一種です。

免疫チェックポイントという「用語」自体は新しい響きはありますが、昔から免疫細胞表面のレセプターはいくつも知られており、これをヒットする薬はいくつもありました。

代表例が、インターフェロンやインターロイキン2です。

これらも、今風に言えば、免疫チェックポイント薬ということになります。
ニポルマブの一つ先輩の免疫チェックポイント薬は抗CD28抗体でしたが、これは、効果がなかったのではなく、副作用が激しすぎ、ICUに担ぎ込まれる人が続出したので開発中止になりました。

ニポルマブは、そこまで急性の副作用はでませんがその分、効果の方もマイルドになっています。

結局のところ、薬である限り、どこまでいっても

「コーリーの毒のジレンマ」

つまり、

がんを目の前に眠っている免疫を目覚めさせるには、がんより危険な刺激を
加える必要があり、安全になるほど効果は期待できなくなる。

この軛を正面から破った薬は一つもなくニポルマブもまた、コーリーの毒のジレンマを回避する策として考えられたものの効果と安全性のジレンマの軛に縛られていることにかわりありません。
体内の強力な免疫抑制を跳ね除けるだけの十分な免疫刺激物は、強すぎる免疫副反応を招きどうしてもリスクが高い、、、
だったら、免疫抑制信号をブロックすれば安全に免疫抑制を解除して腫瘍免疫(がん免疫)を再活性化できないだろうか、、、、

理屈としては分かるのですが免疫制御は非常に複雑であり 一つの薬剤で、簡単に自在に制御できるようなものではありません。

現在、上市されている免疫チェックポイント阻害薬はT細胞への免疫抑制信号をブロックするとしていますが米国で承認申請中のものは従来の分子標的薬と同様にADCC活性(NK細胞の傷害活性を高める機能)を付加したものに
なっていますし、その後に続く、開発段階にあるもので、ある程度、進んでいるものはどちらかというと、免疫チェックポイントに対する阻害薬よりも、刺激薬の方が多くなっています。
さて、夢の新薬を実現するには何をクリアすればいいのでしょうか。
がん細胞だけを殺して正常細胞は殺さない、傷つけない

つまりがん細胞を狙い撃ちにするこれが必須条件です。

ところが、がん細胞には必ず存在し正常細胞には存在しない便利な
標的物質、がん特異物質が一つもみつからない以上、物質である薬は特定の物質に結合するのですから、つまり、薬で、がん細胞を狙い撃つことは
できない、よって、薬でがんは治らないわけです。

では、ニポルマブはというと、T細胞を活性化すると言われている通りの機能である限り、がん細胞を狙い撃つことはできません。T細胞には、がん細胞に対する特異性がないからです。

一部は、がん細胞を攻撃するものもいますが漠然とT細胞を活性化すると、正常細胞も攻撃されてしまいます。

当然、重篤な自己免疫疾患が発生という治験通りの事態となるわけです。
やはり、がん細胞を特異的に認識・攻撃できるNK細胞を動員するしかありません。
従来の分子標的薬にも、ADCC活性により抗腫瘍効果を発揮するとはっきり銘打ったものが沢山あるわけですが、この場合、NK活性を2倍とか、何倍というレベルで活性化するだけですので、たまにスーパーレスポンダーが
出現しますが、高頻度というわけにはいきません。

ポテリジェント加工により、ADCC活性を100倍強化するポテリジオは、確かに体内のNK活性を強力に強化するようですが
ADCC活性以外にも、CDCC活性、つまり炎症反応の誘導能も劇的にアップさせてしまうようで猛烈な炎症を起こす傾向があります。
副作用が強いため、NK活性だけを高めて、といいとこどりはできません。
今後、もう少し程よいレベルのADCC強化型分子標的薬かNK細胞への抑制信号をブロックする免疫チェックポイント阻害薬などが 登場することに期待はしますが、物事の道理に照らして考えれば非常に複雑な体内の免疫抑制網を
かいくぐることを考えるよりももっとシンプルな環境にある体外にNK細胞を採りだして培養により強化する方が遥かに確実です。
目先を変えたニュースがいくら飛び交っても原理原則は、そう滅多に変わるものではありません。

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