藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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2018年01月21日

  

がん, 免疫

このところ「丸山ワクチン」がネット上で賑わいをみせております。

 

スポーツ選手が投与を受けている、とか科学的根拠が明らかになった、といった話題がSNS上で飛び交っています。

 

科学的根拠は最初からあります。

 

相変わらず科学的根拠と臨床上のエビデンス(有効性の証明)が混同されていますが丸山ワクチンは、結核菌の抽出物を注射するのですから何らかの免疫刺激がある、とここまでの根拠はあるのです。

 

あとは実際に治療に使ってどうか、で、これをエビデンスと呼ぶのですが、白血球が増える人がいらっしゃいます。

 

ややこしいのは抗がん剤で免疫システムがダメージを受けていくところへ丸山ワクチンを併用すると、免疫刺激効果は当然、減殺されるので効かないのでは、という側面と、全く逆に抗がん剤によって白血球が減少し感染症で亡くなる方が大勢いらっしゃるので丸山ワクチンによって白血球の減少に多少でも歯止めがかかり、投与しないよりはした方が若干の延命効果がでるかも、という側面もあります。

 

丸山ワクチンも抗がん剤もどちらも時代と共に投与量などが激変していますので、使用状況により効果の方も大きく変化するのかもしれません。

 

ちなみに、レンチナンという抗がん剤があります。抗がん剤といっても免疫刺激剤の一種で、毛が抜けたりはしません。
これはレチナム、つまりシイタケの抽出物で菌体の一部を筋肉注射し若干の免疫刺激効果はあります。

 

シイタケは食べると単なる「ご飯」。これが筋肉に生えていると「事件」ですから少し免疫を驚かせる効果があります。

 

ただし、丸山ワクチンにしろ、レンチナンにしろ単独投与で進行がんの症状を劇的に改善するという類のものではなく、あくまで若干の免疫刺激を加えるというものですのでもの凄い効果を期待するのは無理があります。

 

実際に進行がん患者さんに、これらの薬剤を単独投与しても、血液中のNK細胞の活性はほとんど動きません。

 

がん患者さんの強い免疫抑制がかかっている状態のところへ単独投与しても、がん免疫を顕著に刺激するものではない、ということです。

 

特に丸山ワクチンの場合、投与される物質の量がレンチナンより遥かに少ないという特徴があります。

 

製剤の製造を引き受けていた旧第一製薬高槻工場では丸山ワクチンの検証を徹底して行ったところ「効果あり」という結論に至ったのですが、物質としてごく微量であり、分析してもただの水と同じなので品質管理ができないという理由で製造を返上し、ゼリア新薬さんが引受られました。

 

ただ当時は、結核で命を落とされる方も多く人間の体の中で戦い、「相手を倒した」強い結核菌を用い、それも現在よりは濃度が高い(原液を希釈するのですが、希釈率が低いという意味です。何がどれだけ入っているかは当時はわからなかたったので)状態で使用していたそうですが、治験を実施する際に投与量を減らされてしまいます。

 

また人工培地で培養された「弱い」菌体を用いるようになっていった、と時代と共に「マイルド」になっていきました。その分、切れ味が落ちるのはどうしようもありません。

 

私自身、結核菌の培養に必須の物質を世界で初めてGMP準拠で製造するプラント立ち上げを担当しましたので複雑な心境です。血友病の薬をつくる細胞培養にどうしても必要なのでプラントをつくったのですが、結核菌の培養にも使われるようになりました。

 

免疫刺激系の薬剤である丸山ワクチンとANK療法を併用するのかというと治療強度がまるで違うため特に併用が推奨されることはありませんが、併用して問題ということはありません。

 

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