このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。
TOP > NK細胞は何年くらい前からがん細胞を傷害してきたか
2017.11.23.
NK細胞をがん治療に用いるのは
NK細胞が圧倒的にがん細胞を傷害する能力が
高いからですが、いつ頃からNK細胞が
がん細胞を傷害するようになったのでしょうか。
たぶん、ま、たぶんが数十個くらいつきますが
おそらく6億年近く前から。。。
もちろんこういう話は正確なことがわかるのではなく
そういう説があり、そして諸説あり、ということになります。
ずいぶん長いことがん細胞を殺してきたわけです。
何を根拠にこういう話がでてくるのかというと
5億年前とか6億年前のNK細胞の化石がみつかった、とか
がん細胞の化石がみつかり、そして今NK細胞が攻撃している
最中に不幸にして両者ともあっという間に何かに埋まって
戦闘中の化石が残った、、、 ということは一切ありません。
昔の映画にでてくるティラノサウルスは後ろ足で立って
背中を立ていたけど、今は背中を水平にしている、
等というのも、化石というかけらのような情報の断片から
見てきたような話をするから
実はこうだった、という物語が
コロコロと変遷していくわけですが
NK細胞とがん細胞の進化論ともなると
化石もないわけです。
エビデンスの鍵を握っているは
今、この世に生きている脊索動物たちです。
脊椎の原型である原索をもつものの
脊椎そのものはもっていない脊椎動物の
元になったと考えられている動物で
一般に一番よく知られているのは
「ホヤ」でしょうか。
研究者の間ではナメクジウオがよく
知られていますが、あとは
ヤツメウナギです。
夜間戦闘機にレーダーを搭載してきた米軍に対し
日本軍の戦闘機パイロットが夜目が効くように
食したヤツメウナギ。 目が八つあるのではなくて
ヌルヌルする粘液を大量に放出する孔が目のように
見えるのですが、パッと見、上から眺める限りは
少し変わったウナギに見えます。
私もこれはウナギなんだと言い聞かせて
指三本、人さし指と中指をあて、二つの指の間あたりを
反対側から親指で軽く押し込み
片持ち式に負荷を軽くかけるという
少しコツを掴むと簡単に捕まえられ
いくらヤツメウナギがもがいても前には
進めなくなるのですが
この要領は蒲焼にするウナギを掴むのと全く同じです。
両手で握るとヌルヌルと抜け出し永久に逃げるウナギを
掴み直し続けることになります。
水俣湾にはウジャウジャいて、夜行性で腐った肉を
好むため、夜餌を仕込んだ罠をかけておくと
簡単に大漁となります。 腐臭に集まってくるのです。
で、冷静にこいつの顔というか頭というか
ヘッドの部分を正面から見るのはお勧めしません。
ナメクジの化け物ですね。
顎がないのです。
腐った魚なんかを丸い口の中の何というか
内臓というのか組織をそっくり返るようにデロッと
出して腐肉を絡めて丸のみします。
一応、歯は並んでいますが餌をひっかける程度の
働きしかなく、かみつかれて痛いということはありません。
あの姿をじっとみてしまうと、どうも指でヌルヌルボディーを
掴む気にはならないので、なるべく正面は見ないように
ウナギなんだ、と思いながら解剖する時も上から眺めるように
していました。
ヌルヌル粘液の量はすさまじく
腐肉あさりのライバルである
アナゴなんかがヤツメウナギに
噛みつくと、ヤツメウナギが放出する
膨大な量の粘液に巨大なアナゴの体がすっぽり
包まれてしまい窒息死します。
どんな巨大粘液タンクをもっているのかと
思うとヤツメの語源となった粘液放出口を
繋ぐ細長い粘液腺があるだけで
そこから放出される多糖類質の粘液の素が
ちょろちょろと出ただけで
海水に触れると一気にバケツ一杯くらいの
粘液になってしまいます。
実験するのに面倒になると
少し酸性にすれば粘液は消失します。
尻尾に一つ、脳の後ろ左右に一つずつ
胸のあたりに一つ、一匹に4つも心臓がある
何かと変わった生き物ですが、それは
脊椎動物を普通と思ってみるから
変わっていると見えるわけです。
で、この手の脊索動物にもNK細胞が
存在します。
人間とネズミのNK細胞だってかなり
違いますので、ヤツメウナギのNK細胞といっても
NK-like 細胞 NK的な細胞という方が適切かも
しれませんが、とにかくNK細胞の御親戚が
いらっしゃるわけです。
ということは、ヤツメウナギの祖先様と
私たちの祖先様が共通だった状況から
それぞれの進化の方向へ別れた時には
おそらく共通の祖先様の体内にも
NK細胞さんはいたんだろう、と
考えられるわけです。
いつ分かれたのか。
正確にはわかりませんが
6億年よりは少し手前ぐらい
5億7千万年前とか、いや5億4千万年前とか
このあたりは、諸説ありとなりますが
5億年よりは昔のことだろう、と。
じゃ、そのころから、がん細胞が存在して
NK細胞が、がん退治をやっていたのかというと
たぶん、がん退治やっていたんでしょうが
何せ昔の話ですから
証明することはできません。
ヤツメウナギの場合、やっぱり、
がんになってしまったら
ANK療法をやるのか、というと
そういうことはありません。
がんという病気にはならないのです。
あのドロドロとした水俣湾を夜な夜な
徘徊し、ヘドロの中に口を突っ込んで
腐肉をあさるという習性を考えると
あっという間に感染症にかかりそうな
ものですが、脊索動物はむちゃくちゃ
感染症に強いのです。
強烈な自然免疫を発動しており
大変、劣悪な環境下でも
なかなか病気にはなりません。
脊椎動物と違って
獲得免疫をもたないので
獲得免疫による免疫抑制が発動されないため
自然免疫の活動が脊椎動物と比較すれば
異常に活発なのです。
ということで、ヤツメウナギでいくら実験を
やろうにも、がんという病気にはなりません。
もっともネズミだって、がんという病気にはならないわけで
かなり無理やり実験をしているわけですが。
ヤツメウナギにおいても、NK細胞が
がん免疫監視機構の担い手なのである
と証明するのはかなり至難です。
自然免疫が強すぎて、がん細胞が存在したとしても
あっという間に全滅するのでしょうから
観測する余裕がありません。
脊索動物や脊椎動物、あるいは両者の共通の先祖が
発生した当時の状況から、おそらくがん細胞は
大量に存在したであろうと、推測されるわけですが
それはまたの機会に。