今年の3月のことですので、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。
富山大学浜崎教授と、東海大学大櫛教授が、それぞれ衝撃的な発表をしました。
コレステロールと疾病率や死亡率の関係について、国内最大規模の疫学調査結果を報告されたのですが、大きな関心を呼び、霞ヶ関の厚生労働省内で記者会見まで行われました。
結果というのは、
① 血中総コレステロールについては、高くても低くても大きな差異はなく、特に女性の場合は、顕著な差はない。 男性の場合は、高ければ高いほど病気になりにくく、長生きする傾向がある。
総じて、総コレステロールは高ければ高いほどいい、ということになる。
➁ 血中LDLコレステロールについては、標準値であっても高い値であっても、疾病率、死亡率に大きな差異はない。 男性の場合は、LDLが高いと若干、心筋梗塞を発症し死亡する率も高くなる。 ところが、LDLが低いと、がんなどの疾病に罹る率が高くなり、死亡率が上昇する。
LDLが低いグループは、標準的なグループと比較して男性で1.6倍、女性で1.4倍、死亡率が高くなる。
総じて、LDLは、低いと死亡率が跳ね上がる。
高い場合、女性なら何の問題もなく、男性でも、
低いことに比べれば遥かに問題は小さい。
もっと簡単にいうと、悪玉コレステロールと言われてきたLDLは高くても、そう大きな害はないが、低いと病気で早く死にますよ、ということです。
最後の結びに、LDLは、ホルモンを合成するのに重要な物質なのでこれが不足すると、ホルモンと相互に深い関係にある神経系、免疫系に異常を来たすと考えられる。
結果、免疫力の低下が、がんの増殖を招くのであろう、としております。
この研究、何せ、スケールが大きいのです。
複数の疫学調査の中から、同じ基準でデータを分析できるものを統合する「メタ分析」という手法を取っているのですが、延べ人数でいえば、対象は17万人、追跡調査の年数は、最低でも5年、中には8年追跡したデータも含まれます。
疫学調査には、いい加減なものも多く、長期間トレースしたということは、長期間の間に色んな要素が入ってしまうので、何を見たのか分からない、とか、問題をつつけば、いくらでも批判できます。
ですが、ここまでの規模となると、流石に、「物を言う」でしょう。
そもそも、コレステロールの影響というのは、長期間トレースして初めて、何かが言えるのです。 結局、動脈硬化になったのかならないのか、心筋梗塞になったのかならないのか、死亡したのか
生き続けられたのか、何年も追いかけないと、データの意味はありません。 疫学調査という手法以外に、これと言うエビデンスの出しようがありません。
ところが。
今回の結果、科学的には、驚くには値しません。
科学的に考えられることからすれば、あり得る話、予想の範囲内の結果です。
そもそも、「コレステロールが悪い」という明確な科学的根拠はないのです。
むしろ、ホルモンの原料のみならず、細胞膜を丈夫にする、油と水を混ぜる洗剤のようなコール酸の原料になって、消化を助けるのに必要、(なお、コール酸は血液中のコレステロールを回収してくる作用もあります)、、、、などなど、 どうしても必要な物質であることが分かっています。
たしかに、動脈硬化部位には、コレステロールが固まってますから、コレステロールが悪いんだ、という話になり勝ちなんですが、それを言うなら、カルシウムの沈着の方が問題です。
カルシウムが沈着することで、動脈硬化は更に硬くなります。
でも、何故か悪玉カルシウムとは言わないのです、変ですよね。
コレステロールが沈着するのは、無視できない現象ですが、何故、沈着するのか、そちらの方が真の原因です。 コレステロール濃度が高いから沈着する、という根拠はないのです。
また、「悪玉」、とか、「善玉」という言い方には、何ら科学的根拠がありません。お医者さんに悪玉コレステロールといわれたら、こう質問してみてください。
「先生、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの違いを、 化学構造式で説明してください。」
この質問に答えられるお医者さんはいないでしょう。
何故なら、コレステロールに、善悪の区別はないからです。 コレステロールは、あくまで、コレステロールです。 エステル型とか、フリーフォームとか、バリエーションはありますが基本的に、コレステロールという物質群としては、一種類であり悪玉、善玉というような区別のしようがありません。
HDL、LDLというのは、コレステロールの種類とは関係ありません。
HDLコレステロール、なんて言い方するから混乱するのです。 HDLとか、LDLというのは、油の団子みたいなものとお考えください。 HDLが作られた当初は、薄い円盤、ディスク状なので、団子というイメージからは遠いのですが、この際、目をつぶってください。
コレステロール、中性脂肪、リン脂質、脂肪酸、要するに、血液という塩水のような液体の中で、あんまり溶けない物、血液に溶けて全身に運ぶことができない油類を集め、アポリポプロテインという
まあ、油と馴染みやすい部分と水に溶ける部分を併せもつ蛋白質ですね、こういうものをハンバーグつくるときのつなぎの卵みたいに混ぜることで、まとまった団子のような形にし、かつ、塩水みたいな血液の中を運ぶことができる状態にするのです。 こうして、体内、すみずみまで、血液やリンパ液の中を「油」が運ばれていき、また、回収されていくのです。
実際には、厳密に成分比率が決まっている訳ではありませんし、体内を移動中に、成分が変化します。 HLDも旅をする内、形もまあるく、まん丸団子になって成分的にもLDLに近くなっていきます。 HDLとLDLの二種類がある、ということではなく色んな状態の「団子」があるのです。
アポリポプロテインには、A-I、A-II、、、Fまで沢山の種類があります。 LDLに含まれるアポリポプロテインはBタイプです。 このBタイプに変異があると体内のコレステロール合成が異常に多くなることが知られており、鍵は、アポリポプロテインにあることは20世紀半ばから分かっており、その後も、精力的な研究が続けれられています。
さて、コレステロールは、体内に合成されるのがメインで口から食物として入る量は無視していい位、少ないという大前提があります。 この手の話、厳密に体内合成されるコレステロールを測定することはできませんから、そういう話、と聞くしかないのですが、一応の根拠はあるのです。
つまり。 世の中、ダブルスタンダードということなのです。
コレステロールが多い食品は悪い、とかコレステロールの吸収を防ぐ、とか口から入るコレステロールが問題という前提の食品とか健康食品とかが沢山、売られております。
一方、医薬品の世界では、口から入るコレステロールは無視できる量であり、体内のコレステロール合成を阻害する物質が、堂々と、世界のトップクラスの製品として販売されているのです。
どっちかがおかしい、と思われるかもしれませんがどっちも変という証明が、今回の大規模疫学調査の結果なのです。
もう随分と長くなってしまいましたので、続きはまたの機会とさせていただきますが、これだけは申し上げておきましょう。
食品の中のコレステロールの量を気にしなければいけない根拠はないのです。 じゃ、今日から、好きなだけ食べるぞ、というのは早計です。 食べ過ぎたら太ります。当たり前です。
また、コレステロールが多い少ないはどうでもいいのですが中性脂肪を取りすぎたら、確実に太りますし、害もあります。
一般に、中性脂肪とコレステロールと区別をつけるのは難しいでしょう。 油っこいものを食べ過ぎるとよろしくない、という当たり前のことに何の変わりもないのです。 わざわざコレステロールを特別に気にすることは必要ない、ということです。
じゃ、炭水化物! 炭水化物中心の食事にすることで油のとりすぎを抑えよう。
これも間違ってます。
炭水化物を取りすぎたら、余計な分は体内で脂肪に変わります。取りすぎたら、おんなじことです。 ちなみに、蛋白質を取りすぎても、やはり脂肪に変わりますし、もっとやっかいな問題も生じます。 じゃ、お酢だ! お酢は、典型的な脂肪酸です。 体内では、即、立派な脂肪になります。
夏場、油っこいものを食べたくないし、だけど、なんか元気がでない、そういう時こそ、体に負担なく、脂肪の元を美味しく食べれるから、お酢はいい食材なのです。
じゃ、何を信じればいいの?
何も信じてはいけないのです。
野生のライオンが、いちいち、あのシマウマを食えば、コレステロールが、、、そんなこと考えてません、多分。 自分が何を食べればいいか位、自分で分かるはずです。 私達は、生命体なんですから。 お腹がすけば、食べればいいのです。 お昼だから、食べる、朝は食べなければ駄目、こういう決め付けは全て、体に負担をかけます。 食べたい時に食べたいだけ食べればいいのですが、食べ過ぎた、と少しでも感じたら、そこで食べるのをやめたほういいでしょう。 残すのは勿体ない、気持ちは分かりますが、食べ過ぎる位、料理をつくったり、注文した時点で、もう「やっちゃった」のです。 残さないように注文すればいいのです。 食べ過ぎと感じたら、食べてしまって、命を縮めるより、残す方が、健康に長生きできると思いますよ、エビデンスはありませんが。
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