藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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2011年03月04日

  

がん, 免疫

2011.3.4.

子宮頸がんと「関係ある」ものの
明確な原因とまでは言えない
パピローマウイルスに対し、
ワクチンが実用化された、
ということは、ATLの明確な
原因であると特定されている
HTLV-1ウイルスについて、
ワクチン開発はどうなってるのでしょうか。

ほとんど行われていません。

子宮頸がんのワクチンなどと
紛らわしい名前がついていますが、
パピローマウイルスへ感染する前に
投与する、そういう前提で開発されています。
感染後に投与しても効果ない、と
されています。

感染したり、ましてや、「がんが増殖してから」
ワクチンをうっても、何の意味もありません。
インフルエンザに感染してからワクチンを
うつ人はいないのと、同じ理屈です。

その点、HTLV-1の主たる感染ルートは
母子感染ですので、胎児にワクチンはうてませんから
開発を試みることさえできないわけです。

では、成人後の感染についてはどうかというと
クラミジアであれ、梅毒であれ、淋菌であれ
感染を防ぐワクチンの開発は、盛んに行われたましたが
うまくいったものは一つもないのです。
病原体の物質の一部を抗原として注射すればいい、
ここまでは、話としては一見、簡単で、
実際に抗原物質の投与を
行うところまではいくのですが、免疫システムは
そんな単純ではなく、単に、抗原物質を注射した、
それだけで制御できるものではありません。

今のところ、HTLV-1に感染していない人へ
ワクチンを投与する計画なり、開発プランなりは
動いていません。

では、感染した後にうつワクチン、はどうかというと、
一応、研究プログラムは存在します。

HTLV-1感染者といっても、T細胞の一部に、
ウイルスの遺伝子が含まれており、細胞表面にも
ウイルスが活動した痕が残っているのですが、
ウイルスそのものはほとんど活動していません。
この状況で、細胞表面の「ウイルスの痕」物質を
標的とするワクチンを開発すればいい、という
話があります。 根拠は、他人の造血細胞を移植した
ATL患者体内で、特に、治療の予後が好ましい傾向を
示した患者さんの中には、この「ウイルスの痕」物質を
認識し、この物質を目印に相手の細胞を攻撃する
CTLが誘導されるケースがみられるから、というものです。

ですが、感染者本人の免疫細胞は、HTLV-1感染を
許してしまったわけです。 体内に、「ウイルスの痕」
物質を提示する感染細胞が存在しながら、
これを攻撃しない状態なのです。
CTLが誘導といっても、他人の造血細胞から
分化してきたT細胞が、CTL化したのであれば、
本人のT細胞は、何もしていない、ということになります。
CTLが、患者さん、造血細胞提供者、どちらに
由来するのか、確認されたかどうか、それは知りません。
少なくとも、今まで、無視してきた相手を突然、
攻撃するようになるには、患者本人の免疫システムに
大きな変化をもたらす必要があります。

強いアジュバントによる免疫刺激によって、
免疫の目を覚まさせることはできるのかもしれません。
NK細胞を活性化させると、HTLV-1感染細胞を
試験管内で全滅させる現象はみています。
また、がんを発症する前ならば、免疫抑制も
それほどではない可能性があります。
ただし、強い免疫刺激は強い副作用を伴いますので
95%の感染者は生涯、発症しない、しかも平均55歳まで
健常のまま、こういう状況で、発症していない人に
強い刺激を加えるのは、慎重の上にも慎重に
考えるべきですね。

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