藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2010年07月23日

  

がん, 免疫

2010.7.22.
 
 
リツキサンの次に
がん治療用としては、
もっとも代表的な抗体医薬品である
ハーセプチンのことを書くつもりでしたが
丁度、今、日経メディカルオンラインで
別の抗体医薬品、アービタックスについての
公開議論が展開されています。
 
テーマの一つは、アービタックスと化学療法剤の
併用による治験の一つの結果が失敗に終わったことに
ついてです。
 
結果は、効果が出ないどころか、むしろ逆効果だった、
なぜだろう?? という内容です。
 
 
現時点で、抗がん剤の治験を行う場合、
被験者全員が、既存の化学療法剤の投与を受けた上で、
新薬候補を投与したグループと、しなかったグループの
余命の差を調べることになっており
抗体医薬品も、最初の治験は化学療法剤との
併用が条件となります。 使用実績がでてくると
投与時期をずらすとか、単独投与の治験も行われるように
なっていきます。
 
 
これは全くもって、非科学的なやり方なのですが、
化学療法屋さんの言い分は、「患者さんを治療しない
ということは許されない」 です。
何も治療を受けない患者さんと、新薬のみ投与される患者さんの
余命を比較する、という治験は、実際には行えません。
誰も好き好んで、「データになるため」、何も治療を受けずに
ひたすら完全管理下で入院し、検査漬けの日々を送ることなど
望まないからです。 
 
 
とはいえ、あまりにも非科学的な治験設計です。
 
科学というのは、「データ」を取る前に、
まず、どう考えるのか、仮説を立て、その仮説の証明には
どんな条件で、どんなデータを取ればいいのかを設計し
その上で実際に、データを取るものです。
 
元々、習慣的に決まっているやり方で試験をして、出てきたデータを見て
ああ、これが正しい! なんていうやり方(つまり今の治験のやり方)は
「科学」の原則から逸脱しています。
 
最初に考えないといけないのです。
 
 
アービタックスは、EGFレセプターという細胞増殖因子の
受診アンテナをもつ細胞の増殖抑制効果を狙うものです。
 
 
一方、化学療法剤は、増殖中の細胞にダメージを与えるものです。
ところが、アービタックスが、がん細胞の増殖を妨害したら
どうなるでしょうか。 当然、化学療法剤の「効き具合」が悪くなるはずです。
つまり、アービタックスによって、悪性度の高いがん細胞が、化学療法剤の
攻撃から守られる、ということになるはずです。
 
 
はてさて、こうなると、誰が、がん細胞を殺すのでしょうか。
 
 
今回の治験の結果は、アービタックスには効果がないことを示しているのでしょうか。
 
そんなことはありません。
効果が出るはずのない治験を設計したのですから。
 
 
エビデンスというのは、データがあればいい、のではありません。
データを取る上で、どうしてそのデータを取るのが妥当なのか、
という「根拠」が必要なのです。 根拠なきデータを蓄積し、
エビデンスとしてきたため、「効果を示すエビデンスがあり、
そして、患者さんは苦しみながら亡くなっていく」という
今日の標準治療の体系を築いてしまったのです。

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