このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。
TOP > 白血病に早期発見?
池絵選手の白血病公表によって様々な白血病や治療法の解説やらが飛び交っていますが、メディアの人が書かれるものの多くに早期発見だと助かる、という表現が目につき、専門医から白血病に早期発見という概念はない、とのコメントが寄せられています。
私たちも日ごろ、言葉を選ぶのに苦労するというか、私どもの苦労ではなくて、聞いておられる患者さんのご苦労なのですが、案外、医療分野で使われている言葉は曖昧なのです。厳密にしようとすると今度はわかりにくくなり、かなり適当に丸めた言葉が使われているのです。 白血病という言葉自体が正式な病気の名前ではありませんので、白血病であることが公表されただけで正式な病名は発表されていないのですから、現時点で病状や治療法について意見するのはおかしい、と指摘がありますが、それはその通りですね。
私どもでもひごろ「がん」と平仮名で書きます。 これは正式な医学用語ではありませんよ、というメッセージが含まれています。正式には「悪性新生物」です。 厚労省の統計などにも「がん」ではなくて、「悪性新生物」という言葉が使われるのが原則です。 「悪性新生物」には、血液系のがん、肉腫、最も患者数が多い上皮細胞由来の固形がん、など、あらゆるタイプのものを含んでいます。 この中で、上皮細胞由来の悪性新生物は「癌」と呼ばれていますので、「癌」や「ガン」と音が同じでも意味が違う「がん」という言葉を使っています。 一般に広い意味で白血病と言えば概ね血液系のがんと同じような意味になります。
さて、早期がん、進行がん、進行性のがん、限局性のがん、転移性向の強いがん、再発、浸潤、転移、遠隔転移、末期がん、ターミナル、いろんな言葉があり、これにステージIとかII グレードI、グループIVとか、なんとかスコア、更には未分化度や核型異型性とか、様々な言葉が使われています。
これを全部、解説すると大変ですが、まず早期発見早期治療で、事実上の完治(治る、根治、完治、事実上の完治、完全寛解、こういった言葉もたくさんあります)に至るのは、「固形がん」の場合です。 がん細胞が飛び散る前に手術で取り去れば、もう再発はしないので、「事実上の完治」ということになります。完治と言わないのは、本当にがん細胞がとびちっていないのかどうか、厳密に検出できる診断技術が存在しないからです。 実際に、早期発見早期治療だったはずが、再発により亡くなられる方がいらっしゃいます。 1mmの大きさの小さな腫瘍が胃の粘膜の中にみつかって内視鏡手術で除去した、すると98%とか、99%の確率で、もう再発はしないと考えられます。 逆にいうとごく稀にがん細胞が飛び散っていて再発し、死亡される方もいらっしゃるのです。 この場合、診断された時点では早期がん、となりますが、ごく稀に早期がんだと思われたものの、実は進行していたものがごく稀に含まれている、ということになります。
がん細胞がひとたび飛び散れば、固形がんの場合は、手術で腫瘍や周辺リンパ節などを完全に除去できたとしても再発に至り、通常の治療だけでは、ほぼ死亡となります。 「ほぼ」 がつきます。 「絶対」ということはありません。
白血病であれば、いきなり最初から飛び散っている状態ですので手術で事実上の完治や根治といったことは期待できませんし、そもそも原則、手術はしません。 体のどこかに大きな塊ができてしまった場合、手術で除去することもありますが、事実上の完治や根治を目指しているのではなく、大き過ぎる塊があるため、取ってしまわないとどうにもならないから手術するのであって、それで治ることは全く期待されていません。全身のいたるところにがん細胞が散っているからです。 白血病の場合は、早期発見早期治療だから助かる、とはならないのです。固形がんに喩えれば、いきなり再発は必至の状態から始まっているのです。
では白血病は不治の病なのかというとそうではありません。抗がん剤は白血病の治療薬として開発されたのですが、勢いの激しい白血病は、極めて悪性でもありますが、同時に抗がん剤がよく効く傾向があります。抗がん剤のメカニズムもいくつもあるのですが、概ね細胞分裂のプロセスの最中、一個の細胞が二個になる「増殖」中に、遺伝子にダメージを与えるものです。固形がんの場合は、全てのがん細胞が増殖中ということはありません。そのため必ず生き残るがん細胞がいます。また最初から抗がん剤が効かないがん細胞がいくらか存在します。がん細胞は多様に富み、いろんなのが交じり合って生きていますので、どんな薬で攻撃しても平気なのがいます。また固形がんの場合は、滅多に細胞分裂しないがん幹細胞がいます。これはほぼ確実に生き残り、やがてがん幹細胞から新たながん細胞が生まれて増殖を始めます。 抗がん剤だけで、固形がんのがん細胞が全滅することはないのです。
一方、白血病の場合は、固形がんよりもはるかに増殖スピードが速いものが多くあります。増殖中の細胞にダメージを与える抗がん剤は、固形がんより白血病の方が効きやすい傾向があるのです。 血液中にも白血病のがん幹細胞がみつかりますが、がん幹細胞にも様々な段階のものがあり、大元の種は滅多に細胞分裂しません。臨床的がん細胞といいますが、普通のがん細胞に近くなってきたがん幹細胞は、そこそこ細胞分裂します。そこそこ細胞分裂し始めると、それはもう幹細胞ではないのですが、幹細胞の細胞表面マーカーをもっている、など、幹細胞だったころの名残がありますので、簡便な測定を行うと幹細胞のように見えてしまいます。白血病の場合は、こうした幹細胞もどきも、そこそこ増殖しているため、抗がん剤で死滅することがあります。 そして大元の白血病の親玉がん幹細胞が骨髄にいるのであれば、骨髄を放射線などで焼いて、がん幹細胞の大元のものまで死滅させ、正常な幹細胞については、骨髄移植することで補充するというような治療が行われることがあります。放射線は一般に増殖毒として作用する、つまり増殖中のがん細胞の遺伝子を傷害するものですが、照射強度を強めれば増殖中ではないがん幹細胞でも死滅します。 固形がんにそのような強度の放射線を照射すると身が持たないのでそこまでやりませんから、放射線ではがん幹細胞は死にません、と言う言い方をするのですが、骨髄移植によって新たな骨髄細胞が補充されるという前提で、正常組織の壊滅を図る集中的に強い放射線照射が行われることがあります。 それで骨髄バンクの登録を、というキャンペーンになっているのですが、人によって「型」が異なるため、多くの人が骨髄バンクに登録すればするほど、患者さんの「型」に「より近い」人がみつかる可能性が高くなる、ということです。 完全に同じ型というのはまず滅多にありませんので型の不適合が完全にない、ということは期待できません。
結局、白血病と呼ばれるものは、固形がんのような早期発見早期治療、特に飛び散る前の段階での手術で事実上の完治に持ち込めるということがないため、早期の固形がんよりも治療が困難になりますが、逆に増殖毒である抗がん剤が固形がんよりもよく効く傾向があり、うまくすれば、事実上の完治に持ち込める可能性もあり、進行がんの中では固形がんよりも命が助かる可能性があるということになります。 これはもちろん標準治療だけを受けた場合の話です。 ANK療法を持ち込めば全く話はかわってきます。 なお、白血病というのは物凄く種類が多く、固形がんよりも遥かに細かく分類されています。 種類によってはさっぱり抗がん剤が効かないもの、一時的には効いても直ちに再燃を招くもの、分子標的薬が非常によく効くもの、さっぱり効かないもの、固形がん以上にバリエーションが多く、様々です。