このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。
TOP > 抗CD19/CAR-T療法(CTL019) FDA承認取得
2017.9.1.
ノバルティスさんの抗CD19/CAR-T療法(CTL019)が
米国FDAの承認を取得しました。
値段は、予想を大きく下回り
47万5千ドル (5千万円強くらい)
となりました。
ざっくりで言うと、予想の3分の2くらいの
価格で落着しました。
トランプ大統領が、
米製薬業協会の重鎮の方々の離反行動に対し
今後、医薬品産業は、度重なる薬価引き下げの
憂き目をみるであろう、と警告していたのが
実現した(?) のかどうかは知りません。
CAR-T療法については、これまでも何本か
書いてます。
CAR-T とか、CAR-T免疫細胞療法などで
検索すればでてきますが、
念のため、タイトルを記載しておきます。
CAR-T療法
CAR-T療法とCTL療法の違い
CAR-T療法(CTL019)CR率43%報道について
CAR-T療法7400万円 vs CTL療法 無料
書いた時期が異なりますので、価格などは
数字が違っています。
書いた時点での予想値です。
誰の予想かというアナリストの予想です。
CAR-Tがどのようなものかは、すでに
書いておりますが、今回、承認になったものは
B細胞に発現するCD19を標的として認識するよう
遺伝子操作した、患者本人のT細胞を培養して
体内に戻す、というものです。
B細胞が、がん化しているもの、及び、正常なB細胞を
攻撃します。
そのため、B細胞系以外のがん治療には使えませんし
副作用も激しいものがあります。
治療対象は、とりあえず、25歳以下で、かなり
症状が進行し、さらに、抗がん剤が奏効しない人から
投与開始、と想定されています。
まず、この「薬?」、、、 「細胞医療製品?」は
米国で承認取得ですから、
今のところ、
日本では治療を受けられません。
「並行輸入」という概念も当てはまりません。
「個人輸入」もできません。
リンパ球バンクで同じものをつくって
自由診療で処方できないのか?
⇒ 技術的には可能ですが、違法行為に該当します。
届出を出せば、やれるのではないのか?
⇒ やってはいけません。
遺伝子操作しているので、届出ではだめです。
遺伝子操作をした場合は、第一種再生医療として
「事実上の」事前承認が必要です。
(形式的には第一種再生医療でも届出ということに
なっていますが、国の諮問機関の意見をきいた上で
国が計画の変更ないし中止を命じることもでき
実際に、届出を受理されないケースもでていますので
実態は、事実上の承認プロセスを含む届出方式です。)
他人の臍帯血を勝手に投与するという
吾々の理解の範囲を超越する
医療機関が存在したため
問題になっていますが、CAR-T療法を
勝手にやれば違法です。
届出を出すのは勝手ですが、受理される訳がありません。
ちゃんと法律ができていますので、守りさえすれば
混乱は起こらないのです。
ちなみに、CAR-Tを販売している
ところもいらっしゃいますが
あくまで、「研究用」です。
勝手に治療に使ってはいけません。
国内で届出で実施しても合法な
細胞医療は、本人の細胞を遺伝子操作などを
加えずに培養し、本人に戻すもの、だけです。
CAR-Tそのものについては、
既報をご覧いただきたいのですが
なぜ、わざわざ、T細胞に遺伝子操作してまで
そして、5千万円もの値段をつけてまで
治療することを考えたのでしょうか。
まず、NK細胞を用いなかったのは、
培養が困難なため、です。
そもそも、NK細胞の場合は、遺伝子操作を
しなくても、適切な培養ができれば、
如何なるがん細胞でも傷害します。
これを実現したのがANK療法なわけですが
所謂「職人芸」的な培養技術であり
米国で、巨大医薬品メーカーが、
NK細胞を、それも野生型のNK細胞を
「量産」するのは、今までのところ無理です。
やはり、培養が容易で、増殖スピードが速い
T細胞でないと、医薬品メーカーにとっては
扱いにくい。
T細胞を漠然と活性化しても、
がん細胞を狙い撃つことはできません。
現に、免疫チェックポイント阻害薬は
T細胞を、漠然と活性化させるため
正常組織も攻撃を受け、重篤な自己免疫疾患が
高率で発生しています。
CAR-Tの場合も、ある種の正常細胞を攻撃して
しまいますが、被害に遭う正常細胞のタイプを
絞ることができます。
ここで重要なポイントは、T細胞に
「がん細胞を標的に」と指示することはできないので
特定の物質を標的にするしかないのですが
CAR-Tの標的物質はすべて、正常細胞にも
発現しているものです。
では、なぜ、がんワクチン、とか、がん特異抗原と
かつて、日本のマスメディアが大々的に報道してきた
がん細胞特有の物質はどうして、CAR-Tの標的に
選ばれていないのでしょうか。
WT1/CAR-T とか、○○ペプチドCAR-T というのは
どうなのでしょうか。
全く、無意味です。
WT1とか、ペプチド抗原というものが、体内で
がん細胞の標的などにはならないのです。
もしなるなら、当然、CAR-Tを作成する際
WT1を認識するものにすればいいのですが
そんなもので、うまくいった、という話は皆無です。
CD19ペプチドを体内に投与すれば
その方が、わざわざCD19に反応するCAR-Tを
つくるより安上がりなはずです。
なぜ、そうしないのか。
CD19抗体をつくっても、抗体がCD19に結合した途端に
すぐに細胞内に引きずり込まれてしまい、機能しないという
問題もありますし、ペプチドを投与しても、直ちに
分解され、体内で有効な抗原として持続しない、
と言う問題もあります。
また、免疫抑制が強い体内にペプチドを投与しても
なかなか、反応してくれません。
そこで、強い免疫刺激剤を併用して、強引に免疫反応を
誘導すると、今度は、限られた免疫力を余計な反応に
誘導されるからなのか、急逝される患者さんがでてくるのです。
がんワクチンの治験が次々に中止にされたのは
明らかに、がんワクチンを投与するグループの方が
速く、亡くなられる方がでてくるからです。
結局、培養が難しいNK細胞の培養を
体外で実現する以外の道を探るとすると
薬で、NK細胞を活性化させようとすると
副作用がひどい
(インターロイキン2、インターフェロンなど)
薬で、T細胞を活性化させても副作用がひどい
(免疫チェックポイント阻害薬)
がんの抗原と一部研究者が主張してきた
ペプチド等を投与しても、効果なく
免疫抑制が強い体内に、がん抗原と
考えられるものを投与しても
効果なく
わざわざ遺伝子操作をしてでも
そして、正常細胞にも発現している
物質を標的にしてでも
体外でT細胞を培養し、
体外で、戦力を整えてから
投与する、という方向へ
進んできたのです。
では、今後、CAR-T療法は
どう発展し得るのでしょうか。
他の標的を狙った場合、
どういうことが起こると考えられるでしょうか。
(続く)