藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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2018年11月04日

  

がん, 免疫

(前回からの続きです)

 

 

ヒトには存在しないN-グリコリルノイラミン酸(G糖と略します)が、がん細胞表面の糖鎖構造の先端に発現するという報告がありますが、どこまで普遍的か、稀にはという程度なのかはまだ検証が必要です。 ただし、普遍的な傾向だとしても、G糖特異的な抗体を医薬品として体内に投与すると、そっくりな物質であるN-アセチルノイラミン酸(A糖と略します)にも結合し、正常組織を攻撃します。がん細胞だけを狙い撃つことはできません。 徹底的に特異性を高めた人工抗体をつくっても、特異性を高め過ぎると今度はG糖の微妙な状態の揺らぎを標的でないと誤認する率が高くなります。標的を撃ち漏らさない事と標的以外を誤爆しないことは両立せず抗体やT細胞のような単一センサーでは複雑ながん細胞を正確に認識し、狙い撃つことはできません。

 

NK細胞がG糖を標的信号と捉えているかは何とも言えません。NK細胞のセンサーの過半は糖鎖の微細構造を認識するレクチン様のもので、レクチンにはG糖を認識するものもあります。ただしNK細胞のセンサーは数十種類に及び、実際に、どの標的がん細胞に対しては、どのセンサーをどの程度使っているのか、という細部までは解析されていません。

 

レクチンは特定の糖質への特異的結合性が高い蛋白や糖蛋白の総称です。大豆には大量のレクチンが存在しますが、植物蛋白の多くはレクチンで占められます。 

 

G糖やA糖はシアル酸とよばれる糖類の一種ですが、大体30種類くらいのシアル酸が知られており、各々のシアル酸やマンノース、ガラクトース等、他の糖や、これらがつながった糖鎖構造の組み合わせ毎に反応性が異なる様々なレクチンが知られています。 

 

レクチンの糖鎖構造認識精度は抗体やT細胞より遥かに高く、NK細胞は多種大量のレクチン様センサーで、がん細胞表面の糖鎖構造の微妙な差異を認識していると考えられています。  

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