このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。
TOP > 喘息患者は感染しにくい?
既にご覧になられた方も多いかと存じますが国立成育医療研究センターさんが、海外の複数の論文に掲載されたデータを解析して(複数の研究報告を何本も集めてデータを合わせて解析するメタ手法はよく使われています。)、「SARS-cov-2 ウイルス感染者が背景としてもつ他の疾病を調べると糖尿病をもつ率は有意に高いが、喘息をもつ率はむしろ有意に低い」としています。 元論文は閲覧フリーです。
ちなみに新型コロナウイルスと通称で呼ばれることが多いですが正式名称はSARSウイルスの親戚ということで、SARS-cov-2 ウイルス、とこのような表記になります。ただし、疾病の名称はCOVID-19 と呼ばれます。当初、COVID-19ウイルスと呼ばれていましたが、感染する際に認識するレセプターがSARSウイルスと同じことが判明したため正式名称が変わったのです。
喘息患者を集めて、みんなにウイルスをかけてみて感染する率が喘息患者さんでない場合よりも低かったです、と言っているのではなく、あくまで新型コロナウイルス感染者を調べたら喘息持ちの比率が一般に知られている喘息保持率より低い、ということです。 この分析は複数の国のデータを統合していますが、国ごとに医療統計の精度や診断基準等がかなり異なると考えられる、同じ国でもデータの取得法には様々なばらつきがある、等など、精度上の問題を言い出したらきりがありませんので、まずおおまかな傾向をつかむためにやってみるものという性格のものです。 喘息患者は「何となく」ですが、呼吸器に問題があるため、新型コロナウイルスに感染しやすいのか、という懸念が広がっていましたので、統計上はむしろ逆ですよ、というメッセージを発した訳です。もっとも一桁違うとか、ほぼゼロというのではありません。ざっくり3割くらいの違い、ですから誤差の範囲内かもしれません。「厳密な統計処理によって有意な差」ということがよく言われますが、そもそも生データの精度がそこまであるのかという問題は常についてまわります。
一方、米国国立衛生研究所NIHは、喘息患者がよく発現するアレルギー関連のサイトカイン(IL13)が新型コロナウイルスが感染する際にとりつく細胞表面にあるレセプターACE2の発現を抑制する、としています。喘息患者が新型コロナウイルスに感染しにくいかも、という「理屈」の一つの紹介ということです。 また、インターフェロンはACE2の発現を増強するが喘息患者はインターフェロンの産生が少ない、ともしています。 現実にはインターフェロンを適切に投与すれば新型コロナウイルスと同じレセプターに反応するSARSウイルスの感染を防止できていますので、インターフェロンが多い→ACE2が増える→ウイルス感染しやすい、とはならないということです。インターフェロン、特にインターフェロンαは基本的な感染症防御態勢を強化する信号物質です。体の中で起こることは複雑ですので、そんな単純に喘息患者は物質Aが多い、Bが少ない、だからこうだ、感染しやすいんだ、しにくいんだ、という話通りにはいかないものです。
喘息患者は呼吸器疾患を特に気にするので、一般の人以上に、人との接触を避けたということなのかもしれません。激しい喘息発作を経験した人は肺炎で亡くなることがどれほど辛く苦しいのかを、重い喘息発作から連想するかもしれません。もし、統計処理しなくてもはっきりとわかるほど顕著な傾向がある場合、たとえば新型コロナウイルス感染者を調べたら喘息患者が全くゼロだった、ということなら間違いなく何かがあります。 ところが「専門家が厳密な統計処理を行った結果として有意な差が観られた」という場合は、それだけ微妙な差しかなかったということなのであって、実際には関係ないか、ちょっとした人の行動の違いが出ているだけ、つまりバイアスが大きい、ということなのかもしれません。少なくとも今回の場合、喘息患者だと特別に感染しやすいということはないようですね、という傾向は観られる、だからといって、ほぼ感染しないというほど、ものすごい差があるわけではないので、まあ普通に考えればいい、という範囲内のものです。
私もかつてひどい喘息でした。58年前から47年前までの話ですが。新型コロナウイルスときけば、喘息患者なら多少は重症化はしにくいのでは、という「気はします」。喘息発作対処法として子供のころに腹式呼吸を身につけてしまったので、これを矯正するのが大変でした。腹式呼吸は「息が浅い」のです。その分、肺の奥まで空気が入りにくい傾向があります。これは日常生活を送る上では大変、不都合なことです。最も現代人、特に日本の男性の場合は腹式呼吸の訓練を受けていなくても、「それっぽい」呼吸をする人が大半です。 本来、呼吸とはお腹をかためて肺を直接動かす筋肉で肺を膨らませ、肩を広げ、腕は本当はまっすぐなのですがイメージとしてはむしろ後ろにひっぱって胸を張りだすような感じで、とにかく肺を目いっぱい広げ、ゆっくり肺の隅々まで空気を取り込むと肺の奥ほど効率よくガス交換できる肺胞がびっしり並んでいる状態ですので「深い呼吸」ができます。 着物を着て、お腹と腰をがっちりと固め、背筋まっすぐするしかなく、肩を猫背気味に前に出すように身を縮めるのではなくて背中から頭までピンとまっすぐ伸ばして肩を左右に開いていくイメージです。 「深い呼吸」を24時間、常時できるようになるとまず筋肉に力がみなぎり、体力も持続し、頭もさえ、人の話を延々聞いても眠くなったりせず、やる気が持続し、筋肉や骨もつきやすくなります。姿勢もまっすぐになり、腸も働きやすくなり、頭の血の巡りがよくなります。口は閉じて鼻だけ息を通すのですが、肺と気道を目いっぱい使ってしっかり息をしていれば、原則、いびきはかきにくいはずです。口で息をする癖がついている人は寝ている時もそうなる傾向が強く口内が乾燥すると口腔内細菌が増殖し匂いの元になったり歯が悪くなったりしやすくなると言われています。自分でどうかはわかりませんが、寝ている時にどうしているのかは。
古代より呼吸法というのは重要なものですが、腹式呼吸は伝統的呼吸法の真逆をいくものです。 とはいえ、喘息発作の時はそんなこと言ってられません。喘息で命を落とす人は年間1000人ほど。新型コロナウイルスによる死亡と報告されている人数とそう変わりません。息ができない、というより息をしているつもりなのですが、呼吸になっておらず、とにかく苦しいのです。よく自分で息を止めて死んだ奴はいない、と言われました。絶対に息をするから、と。どんなに固く自ら最期を覚悟したとしても、腹を切って内臓まで出す人はいても、息を自分で止めて世を去れた人はいない、それほど人間は息をするものだし、あまりにも苦しくて自分で息を止め続けることはできない、という話です。 「喘息仲間」の子供たちの中でも入院を繰り返す重症者はガリ痩せの子が多く、特に胸がへこんでいるみたいな体型の子が多かったですが、私の場合、体はいたって健康体でアレルギー反応もなく(ないはずないだろ、発作でるんだから)喘息の原因となる物質は特定できない、と言われていました。ほら、これはハウスダスト抗原というものだが、君は皮下に注射しても全く腫れないよね、と説明されました。それ、誰のお家のハウスダストですか? うちのと違うから反応しないだけでは? とすぐに突っ込みを入れるのですが、まともな答えが返ってきたことはありません。 激しい喘息発作を繰り返すうちに心肺機能が強化され、毎年、心臓肥大の疑いで精密検査を受けさせられ、結果はいつも何の異常もなし、ただ心臓が無茶苦茶大きいだけ、ということになり、また肺活量が小学校低学年で8800に達し、5分30秒、息を止めたことがあります。当時の世界記録は4分30秒でしたがジャックマイヨールという人が6分30秒を出し、今はもっとすごいようですね。大人よりはるかに小さい体に巨大な肺をもつにいたったため、息を止めることには長時間(長分ですが)耐えられ、また喘息発作の苦しさに日ごろ鍛えられていましたので息を止める苦しさにもかなり耐えたのです。でもこれで自ら命を断つのは絶対に無理、最後に必ず息はするな、と考えていました。 さて、喘息発作の時には息を吐いているつもりでも気道が広がり、マクドナルドのストローの3倍くらいの太さのものでマックシェイクを吸うようなものですから、あまり呼気がでていかず、今度は吸っても新しい空気が入ってこずに酸素をとりこむことができなくなっていきます。意識が遠のいたり、心臓が痛くなって耐え難い苦痛に襲われ、そしていつ発作が治まるかがわからないという状況が続きました。夜中に激しい発作がでて朝まで起きていることが何度もありましたが、不思議と夜が明けると楽になるのです。仰向けに寝ているのは苦しいので上半身を起こして布団を丸め半身を投げ出すように背中を丸めて臥せるような姿勢をとり、とにかく腹の力で息を動かしました。
小児喘息の原因の多くは「依存」と言われます。そのため小児喘息の重症者の場合は親子関係の調査や心理テストを実施したりしていました。最近は、症状が出れば投薬、と単純化しているようですが、かつて様々な治療などが試みられ、結局、医療としてやれることはひどい症状がでれば対応する、ということに落ち着いたようです。小児喘息の大半は思春期を迎えるとほぼ治癒します。もちろんホルモンのバランスが関係しているというのですが、実際のところ、本当のことは正確にはわからず、治療といっても対処療法の域を出るものはありません。 なお、成人しても治らない人が数%ほど、また大人になってから喘息になる人もおり、小児喘息とは原因が違うようです。私の場合、幸い中学1年の時にほぼ治りましたのでよかったですが、それまでは入退院を繰り返していました。
隣のベッドの「先輩」が夜中に発作で心臓が止まった時のことを今でも覚えています。そんなことやったら死ぬだろう、といっても半分、死にかけているわけですが、かなり過激な措置をやるんだ、と驚きました。一命はとりとめたものの、その人は生涯、いつ心臓が止まってもおかしくない状態で生きていくしかない、という話でした。
あくまで何十年も前の話ですが。入院といっても院内では、とにかく動け、運動しろ、服は着るな、下着と短パンだけで上半身は裸、そして真冬の吹雪の中、病院の屋上で耐寒トレーニングです、裸のまま。そんなものより、肌を強くすると言われましたが、ガチガチに結んだ乾いたタオルで背中をごしごししごくのです。円陣を組んで思い切り前の人の背中をガリッとやるのですがやられた方は痛くてたまらないので前の人の背中を削る手に力が入ります。これがなんで喘息の治療になるのか訳がわからなかったですが擦り切れた肌の上をしごくので、みんな血まみれです。 これ変な団体に入信した話というのではなく、名だたる大病院に入院した時の話です。入退院を繰り返しながら8年間ずっと通院が続き、アレルギー源を皮下注射し続けました。脱感査療法と称し、少しずつアレルギー源を投与し続け、これに免疫が慣れると発作が治まるというのですが。いつまでやるのか、と聞くと治るまでずっとだという答えでした。で、何年もやるので、それ効いてないのではないのか、どうせ思春期になったらほぼ治るんだろうが、意味あるのかと思いつつも万一でも効くなら悪くはない、あの苦しい発作が一回でも減るならと針刺すぐらいはどうってことないので通院を続けました。そもそも原因物質を特定できないと診断されているのに、では少しずつ「何を」注射しているのか、疑問はいくつもあったのですが、些細なことはどうでもいい、とにかくひどい発作で死んでしまう人が回りにいたわけですし、目の前で心臓とまった「先輩」を必死に救命しようとした医療スタッフの背中は覚えていますので、自分も何かあった時は、この理屈に合わない気に入らない連中だけど世話になるしかない、ステロイドとか人工呼吸器もないと困るし、としょーがないと妥協していました。
時折、入院病棟を覗くと懐かしい患者仲間がいることもあり、不幸な知らせを聞くこともありましたが重症喘息患者は多少、華奢なくらいで、まあ、普通の人という印象でした。隣のスペースに腎臓病の子供のベッドが並んでおり、こちらはなぜかみな美人、といっても子供ですが、そのままTVに出ても稼げそうな綺麗な顔立ち、美しい立ち姿の子が多く、男の子も当然、興味ははるかに薄いものの、まあ美男?あくまで子供ですが、端正な顔立ちに品のある立ち振る舞いで、庶民派喘息集団と違い、特別美しい子供たちが集まったような印象でした。ところが彼らは運動をしてはいけないということでやることなく、とにかく動き回らなければいけない喘息の子供たちをうらやましそうに眺めていました。私の場合は走れば喘息発作がでるので勝手に運動喘息と呼び、医師からそんな病名はないと言われていましたが、実際、運動すれば喘息がでたので運動したくなく、学校の体育の授業もほぼ休んだのですが、一生、運動できない子供たちの前で運動をいやがるのは何かまずいという気持ちにはなりました。そして顔見知りの美男美女は2年以内に全員病院からいなくなりました。生きて病院を去った子は一人もいませんでした。
どうして美しい子供ほど、どんどん早く死んでいくのか、という話をよく聞きます。こういう話はデータにもならなければ、論文にもならず、統計処理もあり得ないでしょう。話が落ちてしまいますが、以前、美人看護師が男性の血圧を測定した場合に、そうでない場合に比べて平均15も血圧測定値が高く出た、と学会で発表した無謀なグループがいました。そんなこと発表したらどうなるか分からないんですかね? 当然、質問にならない轟々たる非難の集中砲火を浴び撃墜されました。何を基準に選んだのか、と。科学にはなかなか、踏み込めない領域というのがいくつもあるのです。
あの子たちが今も何かを訴えているような気がします。