2008.12.9.
 
 
ブログですので、話が徒然となっておりますが、
ここまでの中で、重要なポイントだけ、整理させてください。
 
 
CA19−9は、何を認識しているのか
 
 
がん細胞にも正常細胞にも普通に存在しているありふれた物質
 
であり、かつ、
 
がん細胞でも、正常細胞でも、細胞から離れて、血液中に出てくる物質
 
なおかつ、
 
がん細胞の一部のものは、正常細胞よりも大量に血液中に出すことがある物質
 
 
二と三は、一つにまとめられますが、以上の特徴を持つ物質です。
 
 
 
がんの状態を、頻繁に定期的にモニタリングする、という目的を達するためには、
血液検査が一番、実用的です。 
 
血液を採取して検査をするならば、当たり前ですが、
血液中に顕著に高い濃度で出てくる物質を探す、
これがセオリーです。
 
がん細胞に特有の物質であるかどうかは、問題ではありません
あるタイプのがん細胞において、血液中に顕著に大量に出現する
物質なのかどうか、が問題なのです。
 
 
CA19−9は、ヒト大腸がんの細胞株をマウスに免疫して取られた抗体です。
ヒトの細胞なので、マウスに適切に投与すると、抗体を作るB細胞を
取ることができます。

この場合、細胞表面には、沢山の糖鎖が「生えて」いますから、ヒトに特有の
糖鎖構造を認識するマウス抗体産生細胞が取れる確率が高いのです。
CA19−9が認識する糖鎖は、細胞表面糖鎖の、更にその鎖の先端付近の
構造をエピトープとして認識しています。 
糖鎖は、細胞からはずれたり、途中で千切れたりして、血液中に
出てくる場合が多いのです。 それで、赤血球が千切れた糖鎖を吸着し、
あたかも血液型があるように振舞うことは前にも書いたとおりです。
血液検査の対象とする物質としては、血液中に出てこないとどうしようもないので、
その点、糖鎖抗原は、有力候補なのです。
 
その後、CA125とか、CA50とか、同様のアプローチで腫瘍マーカーテストが
製品化されていきました。 
 
そこから先は、原点に立ち返り、
 
血液中の物質を徹底的に探す!
血液中に、がん患者には多く、健常人には少ない物質を探す!
 
ということで、精力的なスクリーニングが行われました。
この辺りの話は、いずれ改めてさせていただきます。
 
 
CA19−9や、他の腫瘍マーカーの原理を普通に考えれば、
ミサイル療法フィーバーの
ネタ作りに使われる
筋合いのものではないのです。
血中に出てくる量が全然異なるというだけで、がん細胞も
正常細胞も、同じように沢山もっている抗原なのですから、
この抗原を対象に「攻撃」すれば、正常細胞も
攻撃してしまうのは当たり前です。

「がん特異抗原をターゲットに、がんを攻撃する」という幻想
時代を超え、形を変えて繰り返し現われ、泡と消えていきます。

どこかに予算の雨が集中する、ということは、その周辺は
日照るのです。 馬鹿げた研究に予算を集中すると、
有益かもしれない研究が最初から足切りされ、予算が
廻ってこないのです。 
米国は特に極端で、その時々の時流に乗らないと研究ができません。 
基礎研究費の95%とか、いや98%という人もいますが、
大半の基礎研究費が、国家予算によって賄われており、
民間企業や個人の資金が基礎研究に廻ってこないのです。 

少し考えれば、最初から無理と分かる幻想治療法に国家のリソースを
投入するので、がん治療の決定打が世の中に普及していかないのです。

ひっそりとNK細胞の培養を研究する、ということは、
周辺の豪雨を尻目に、たまたまオアシスを見つけるか、
自分で井戸を掘るか、サバイバルの途を歩むしかないのです。