2017..5.6.



風邪に抗菌剤を処方するなという
厚労大臣の御言葉は、ある意味、的を得ており
ある意味、日本の医療の無茶苦茶な面の
是正ということであって、なんでいままで
こうだったの、という一面もあります。


そもそも、風邪を治す薬はありません。


がんを治せる薬も一つもありませんし
次々に騒がれては消えていく
「夢の新薬」は、患者さんにとって、
夢でもなんでもないのですが、
実際には、風邪でさえ、治す薬はありません。


よく、症状を抑えるだけ、と言われますが
ほんとに症状を抑えてくれるのでしょうか。

解熱剤は、一般に免疫抑制作用がありますから
体内で病原体が暴れている時に、飲むのは
かなり問題です。 
病原体を助けるようなものです。
特に、相手が、ウイルスの場合、一般にウイルスは
熱で増殖スピードがおちます。
がんの場合は、多少、体温を上昇させても
何の影響もないので、ANK療法実施後の
発熱については、ひたすら体を冷やすことが
推奨されていますが、ウイルスは、熱によって
勢いが落ちることがあるので、無理やり
解熱剤で熱を下げるのは考えものです。

鼻水を抑える作用。

せっかく、粘膜が、頑張って、病原体を
洗い流そうと、ズルズルやってるのに
粘液の分泌を抑えたり、粘度を下げたりすると
これもまた、病原体にとっては、
助けてもらっているようなものです。

痰を切る薬も同じです。
ウイルスをトラップするはずの
喉の粘膜の粘りを消すのですから
これも利敵行為である可能性があります。
こういうものをつくるのにわざわざ
海燕の巣を大量に消耗したため
中華料理に回る素材のコストが急騰した
こともありましたが。


症状を抑える、というのは
自覚できる症状を抑えるということであって
むしろ、風邪の進行を助長するようなもの
ばかり処方しています。

抗がん剤の自覚できる副作用を抑えるために
ステロイドを投与し、体内の腫瘍免疫を下げるのですから
薬剤耐性が目につくころには、がんの反撃に勢いを
つけさせることになりますが、概ね、風邪の薬も
患者本人の自覚するものに作用し、病気自体は
進行しかねないものが大半を占めます。


一般の風邪に、タミフルを処方してしまった
日本の異常な非戦略性については、以前にも
書かせていただきましたが、ああいう薬剤は
効果というのは、深刻な伝染病、それもかなり
死亡率の高い、疫病レベルにおける、
伝播速度の低下を目的にしているものです。
実際、インフルエンザ感染後48時間以内に
処方すれば、症状の進行を遅らせることができます。
といっても、感染後48時間以内は、自覚症状が
ありませんので、この手の薬は、国策として
大量備蓄しておき、いざ、疫病発生と判断された時は
うむを言わさず、世界中で、みんなが一斉に飲む、
そういう使い方をするものです。
インフルエンザは、自覚症状が出る前に
もう人に染してしまいますので
爆発的な伝播を遅らせるために
一斉に使うもので
個々の患者の症状をみながら処方しても
症状が出た時には、もうタミフル投与の時期を
逸してますので、意味がありません。
それどころか、日本が、風邪にタミフルを
処方しまくったため、耐性ウイルスが広がってしまいました。
疫病対策の薬の一つの効力をおとしめてしまったのです。

で、タミフルを普通の風邪をひいた人が
症状がでてから飲むとどうなるか。

治る訳でもなく、多少、症状が緩和はされるのですが
元気になるまでの期間が延びてしまいます。

つまり、

しんどさのレベル x 風邪をひいている日数


こうしたグラフの面積は変わらない、ということです。
薬をのまないと、しんどさはきつくなるけど
早くよくなる、薬をのむと、しんどいピークは抑えられるけど
治るまでの日数は長くなる、こういう傾向があります。


結局、疫病レベルのシリアスな伝染病の蔓延でない限り
一気に、高熱をだして、寝込んでしまう方が、早く
よくなる、ということです。

それで、呼吸障害を起こして気道確保が必要とか
ろくに水分やミネラル、ビタミンなどを補給しないで
脱水症状となると命にかかわります。
ちょっとしたことで肺炎になるような人は
早めに病院へ行くのは当然です。


一方、風邪かな、インフルエンザだったらどうしよう、
人に迷惑をかけてはいけないから、ちゃんと病院へ
いって診断をしてもらおう。

行かないでください。

いってみて、ただの風邪だったら無駄足だったということですが
もしインフルエンザだったら、もうとっくに、病院へ行く途中に
ウイルスをばら撒いています。ましてや、病人が集まる病院に
ウイルスを持ち込んだのですから、迷惑な話です。
これはしんどい、となったら、パッと熱を出して寝込んで
体調を整える、これが基本です。 


こういうベースがずれているところへ
風邪に抗生物質ですから、世界からみれば
仰天ものなのです。

たまたま、体内で暴れている菌にヒットすれば
症状は収まりますが、はずれれば、病原体の
ライバルを減らすだけですから、ろくなことはありません。
院内感染で問題になる緑膿菌や、MRSAは、単なる常在菌で
誰の体内にもいるものですが、抗生剤大量投与によって
一人勝ち状態になるために暴れるものです。

抗生物質は、人間がつくりだしたものではありません。

微生物間戦争において、互いを排除するために
微生物がつくりだすものです。
標的には、細胞壁の横糸を紡ぐ酵素や縦糸を紡ぐ酵素を
狙うものなど、どんな微生物にも存在する重要物質である
ことが一般的です。 第一世代抗生物質は横糸を紡ぐ酵素を
逆作動させて、糸を溶かすように仕向けます。
第三世代抗生物質は縦糸を紡ぐ酵素を逆作用させます。
縦か横かは、菌体が成長する方向からきているのですが
ともかく、まともに作用したら、どんな菌でも生きていけなく
なります。 それでも、微生物の世界では、絶対君主は
存在しないわけで、各々、対策を講じて、抗生物質が
効かなくなる仕組みをいくつももっています。
人間は、抗生物質の構造の一部を変えることで
防御システムをかわす工夫をしてきましたが
必ず、薬剤耐性をもつものが出現してきます。
特に、バイオメンブレンと呼ばれる菌の集団をつくられると
粘液で保護されたうえに、前線の菌が抗生物質の攻撃を
受けると、細胞間連絡網を駆使して、敵の情報を内部の菌に
送り、必要に応じて遺伝子組み換えを起こしてでも
耐性因子をつくりだし、これを他の菌に分配します。
こうした複雑な防御機構をもつ菌に、目をつぶって
抗生物質をばらまくと、悪性度を増した菌が反撃してきます。

抗菌剤は、基本的に化学物質として合成されたもので
耐性は出現しにくいのですが、それはあくまで抗生物質との
比較の話。 錬金術師が作り出した糸を赤く染める
アニリン系合成着色剤が、細菌を染める、つまり殺せることに
目をつけ、そこから改良を重ね、サルファ剤が登場したのは
抗生物質の発見よりはるかに前のことですが、システマティックに
土壌菌から次々に発見される抗生物質に一時は押されていました。
その後、薬剤耐性問題に揺れる抗生物質に対し
オフロキサシン、いわゆるタリビッドが登場し
状況が一変しました。 この薬、日本のメーカーが
世界に先駆けて開発したのですが、海外での臨床試験に
散々、難癖をつけられ、開発が滞っている間に
ヨーロッパメーカーに先を越されました。
私の医薬品ビジネスの師匠は、この薬の開発担当だったので
何度も、その悔しさを忘れない師匠から、医薬品ビジネスに
おける壮絶な場外乱闘のお話を聞かされました。

この薬、いいことづくめのようではありましたが
そうはいっても、いつまでも耐性がでない、というわけにはいきません。

また、新しく開発された抗生剤・抗菌剤ほど、野生の菌には
効かない、という問題があります。

水道の浄化で当たり前に使われる次亜塩素酸による
いわゆる塩素消毒も、都市型の人体内から外部環境に
でていった菌を殺せるだけで、土壌中などに野生する
菌を殺すことはほとんどできません。
あんなものをアフリカにもっていって、消毒している
つもりになっていると、一発で、やられてしまいます。

単なる風邪なら、寝てれば治るのですが、しつこい
感染症にかかった場合、その菌が、通常は人体内には
存在しない外からきたものの場合、抗生剤・抗菌剤の
多くは、効果がありません。
古いタイプの抗生剤を使う方が、ヒットする可能性があります。