2008.11.08. 免疫は外部から侵入した異物を排除する、と考えると、かなり実態からはずれてしまう、というテーマに沿って、ここまで書かせていただきました。 外部のみならず、内部の細胞を排除することもあります。NK細胞ががん細胞を自殺させる場合もあれば、マクロファージが不要になった正常細胞を次々に処理してしまう場合もあります。 また、体内にある異物を全く攻撃しないケースも多々あるのです。 私たちの体は、60兆個の細胞からできていると言われていますが、体の中にいるバクテリアなどの他の生物も、やはり同じ数位いる、と言われています。 「一人の人間」と見えても、実態は「数十兆個(匹?)の生命体の共同生活体」なのです。 免疫系はこの体内の他の生物を攻撃しません。 危険ないから? でしょうか。 いえいえ溶血性連鎖球菌や緑膿菌など、ウヨウヨいます。 溶連菌が喉の粘膜にこびりつくと、なかなか治らないひつこい風邪の症状が続きますし、もし血液中で増殖してしまうと敗血症になって死んでしまいます。 かつて病気の中の王と言われた恐ろしい病気です。院内感染で問題とされるMRSA(メレシチン抵抗性黄色ブドウ球菌)。 これもまた、黄色ブドウ球菌自体はごろごろいるのです。 結構、暴れると危険な病原菌が沢山、体の中にいるのです。 それでも普段、病気になることはありませんし、また免疫系が必死に攻撃、排除する、ということも起こりません。 健康で、あるバランスを維持している限り、病原菌と思われている菌と人間は、互いを攻撃することなく共存して生きているのです。 私は、サイトメガロII型ウィルスというのに大増殖されたことがあります。 これは死のウィルスで、細胞(サイト)と細胞をくっつけてしまい、内臓の細胞が役に立たない巨大細胞(メガロ)だらけになって、結局は死に至る恐ろしいウィルスです。 これが暴れたとなると、死刑宣告に等しいのです。 ですが、このウィルス、日本人なら3人に2人はもっています。 免疫系は特に目の仇にして排除する訳ではありませんし(手を出せない細胞の中にいるから攻撃しないのであって、ちょっと例としてはよくないかもしれませんね)、ウィルスの方も、宿主が健康である限り、何もしません。
なんか、分からなくなってきたかもしれませんが、生命は複雑なのです。善と悪に分かれる勧善懲悪物語ではないのです。 敵と味方に必ず分かれている、とか、敵を認識する特異抗原というのがあるんだ、とか、特異抗原を目印に敵を攻撃するんだ、とか、こういった免疫に関して作られたイメージが実態とかけ離れているのです。  「がん」は、元、正常細胞。バクテリアの話でも意外と複雑なのに、元正常細胞であるがん細胞は、バクテリアなんかよりも、遥かに正常細胞に近いのです。 これをどうやって識別し、排除するのか。 そう単純な話ではないのです。