2008.12.6.

昨日は、抗体が取れたところまででした。

とりあえず抗体が取れても、かなり色んなものに結合してしまいます。
モノクローナル抗体とは名前の通りで、モノ(ひとつ)の細胞をクローン(コピー)
した細胞がつくる抗体という意味です。
誰も、モノ、ひとつの抗原にだけ結合する、とは言ってないのです。
似たような構造をした抗原であれば、片っ端から
結合してしまいます。

そこで、とりあえずの抗体を使って、抗原を精製します。
抗体を作る時に使ったがん細胞のエキスから、
抗体にひっかかる物質だけ取り分け、
純度を上げるのです。

精製された抗原を使って、また、抗体をつくります。
前は、ドカッと、がん細胞由来の物質が投与されましたが、
今度は、抗原らしい物質が集中的に投与されますので、
前回より、シャープに抗原と結合する抗体がとれます。
新たに作り直した訳ですが、事実上、抗体の精製を行った
ことになります。

で、またこの抗体で更に抗原を、そしてその抗原で、また抗体を
という精製の往復を10回くらいはやるのです。

こうしてやっと、なんでもかんでもくっついていたモノクローナル抗体が、
特異性の高い、割と決まった物質の、更に、決まった部位(認識する
心臓部、ほんとのコアの部分をエピトープと呼びます)を認識し、
結合する抗体ができあがります。

ここまでは、まだ抗体つくりの話。
抗体と診断薬、診断キットとは全然、次元が違います。
やっと素材として取れた抗体を、診断キットという製品に
仕上げるのは、ここまでより遥かに大変な作業が必要であり、
富士レビオが実際にやった偉業はこの後のプロセスなのですが、
今回は、書くことはやめておきましょう。

結果的に、CA19−9は、大腸がんの細胞から始まって、
製造承認は、膵臓がんの診断薬ということで取得されました。
「大腸がんを抗原に抗体を取ると、大腸がんに特異的な抗体になる」
というほど、単純ではないのです。  
実際、CA19−9は、膵臓がん以外の診断にも使えますが、
膵臓がんが、一番、承認を取りやすい条件が揃っていました。

19−9 : 「ないんてぃーん ないん」、
と笠原氏は呼んでおられましたが、
数字自体に意味はありません。 
抗体をつくる過程で、沢山の候補が存在し、
それらに番号をつけていくのです。
その中から、たまたま、NS19−9という番号のついた抗体が
選ばれ、英語の腫瘍抗原の頭文字をとってCA19−9という
製品名にしたものです。  抗体医薬品もそうですが、抗体の
名前と、製品の名前は異なります。  何とかマブ、というのは、
抗体の名前、リツキサンというと製品名です。

この抗体、糖鎖抗原を認識します。
タンパク質ではなく、糖がつながった鎖を認識しているのです。
ルイス抗原と呼ばれるものの構造の一部を認識するのですが、
一般に、血液型と認識されています。 血液型の診断キットが
がんの診断に使えるの??  ううん、そう単純ではないのですが、
説明はかなり面倒なので、今回はやめておきましょう。
ちなみに、血液、特に赤血球には、「血液型」というものはありません。
体細胞から遊離したルイス抗原が、赤血球に吸着されて、あたかも
赤血球の型の如くに振舞うのですが、まあ、現象としては、赤血球の型
と考えても、実用上、差し支えありません。

そして、このCA19−9が認識する糖鎖をめぐって、
今度は、診断ではなく、がん治療へのチャレンジに取り組んだ、
というところからが本題なのですが、既に長い、、、 
今日はこの辺で。