2008.12.13.


大型新薬の開発の後期は、
「マーチング・オーダー」となります。
完全に軍隊式の仕事の進め方です。

一日でも早く、血友病の患者のみなさんに
薬を届けられるよう、今日もみんなで、
精一杯頑張りましょう、お互い、よく
コミュニケーションを取りながら、、、 
という風にやれば、いつまでたっても、
供給開始はおぼつかないことでしょう。

最初に、NDA(日本の製造承認申請)の日を決めます。
D−Day を決めるのですね。
ノルマンディー上陸作戦決行日を決めるのです。
そこから逆算して、それぞれの組織なり、人なりは、
いつまでに何をやり遂げるのか、
オペレーションズリサーチを
徹底して詰めるのです。
D-Dayは部隊が上陸する日、
D−1日、つまりD-Day の1日前の日には、
空挺部隊が降下、
艦砲射撃は当然、味方が上陸する直前、
これ間違うとメチャクチャになります。
D-2日までには、船に燃料満タン、
、、、 D-36日までには、、、D-127日までには、
という具合に、未来の日から、
逆に、今日まで戻りながら、
スケジュールを割り振ります。 
こうして、数百万人の将兵と
それを支える数千万人の人々が、
半年位の準備期間の間、総動員を
かけられます。 各々は、全体のことが
見えません、また、まるで畑違いの人達が
何をやっているのかは、互いによく
分からず、そうでありながら、一つの
目標に向かって一緒に働いているのです。 

日々の業務の延長で物を考えていては、
大きな作戦は不可能、事業で言えば、会社は
大きくなりません。

リンパ球バンクの場合は、どうか、、、
(今日は書きません)

もちろん、D-Dayを一旦、決めても、早くできると
見えてくれば、早めることを考えます。 しょっちゅう、
プロジェクト全部のスケジュールの見直しをしていると、
予算修正ばっかりやってる会社と同じことになりますので、
ボトルネック、こいつをどうにかしないと、スケジュール
全体を早めても意味はない、とにかく、ネックを特定する
のが、何よりも重要です。

どうも、話をしていると、D-Mannnose が、ボトルネック
だったようなのです。 スケジュールがどうこうというより、
安定供給先を確保できないと、プロジェクト全体が失敗
ということになりかねない、と。 他の方法、この糖を使わない
方法も可能なのですが、今更、培地の重要成分変更となると、
相当、前のプロセスに戻って、やり直しです。
確かに、薬の有効性は明確、必要性もはっきりしている、
設備は問題ない、培地成分もアミノ酸、ビタミン、ミネラル、
糖類、、、、 細胞を増殖させる成長因子だけは特殊なのですが、
それ以外、特に、ありふれたものばかりで、
安定供給困難なものは見当たらないようです。

D-Mannnose のプラント増強のコミットをもらえないと、
ファクターエイトのプロジェクトを進められない、
とするユーザー側と、では、購入のコミットをしてくれ、そうでないと
一社だけしか大口需要が見込めないのに、
追加設備投資はできない、とするサプライヤー側と、
双方、譲らない、買い手と売り手側で、どっちが
先にコミットするか、というよくある問答となりました。
こういう場合、私は、不必要に早過ぎる決断をすることはない、
という考え方をします。 スケジュールを分析すれば、
いつまでに、どれだけのリスクを伴う決断をしないと
D-Dayに間に合わない、というマイルストーンが見えてきます。
それまでに、リスク要因を減らせばいいのです。
ところが、自分達の決断が、血友病の薬の販売日を
決定してしまう状況となると、待ったなしです。
結局、現行プラントをフル稼働させ、在庫を蓄え、
その分までは、購入コミットをしてもらう、これでお互い、
かなりの期間、大きなリスクを取らず、かつ、薬の
販売日をむしろ早めることができる。
増産は、するという前提で突っ走ってくれ、但し、
正式な意思決定は、いついつまでにする、
工期は、建築確認申請やら、消防法上の検査など、
どうにも動かせない期間があるので、
決断後、稼動まで全力でやって4ヶ月、その間、
増設工事中は、現行プラントも製造できない。

量産に実際に使用するプラントが稼動状態に
なった時点で、FDAのinspector (査察官)を
工場に迎えることが可能なスケジュールを
設定しました。 

一般に、買う側はサプライヤーに対して、
製造能力を高く設定させようとし、
しかも複数購買、二社以上のサプライヤーから
資材を購入するのが原則で、相手のプロセス技術を他の
サプライヤーに教えてまで、競合メーカーを育て、
両方に設備投資させて、オーバーサプライ状態にし、
値段を叩こうとする、それ位の
ことは平気でやってきます。
迂闊に、言いなりになっては後で痛い目に遭います。
不必要に高い製造能力を設定してしまって、
購入してくれる数量が少なかった場合、販売価格に
償却費用を反映させ、割高になる、、、、
要するに、設備投資負担を抑えるだけではなく、
競合メーカーに発注を廻さない動機付けをするべく、
発注数量が多くなるほど買い得になる
計算式を事前に示しておくのです。


今日は、この辺りで。