2008.12.2.

クレスチン問題は、業界内のみならず、一般にも盛んに議論されましたので、
HPを少し検索すると、ドカッと色んな話がでてきます。

さて、まずこの薬、何故、認可になったのでしょう。
がん治療のエビデンスは、大きく分けて、三世代に分かれます。

第一世代 : 臨床諸症状の改善
第二世代 : 腫瘍縮小効果
第三世代 : 延命効果

5年生存率、10年生存率は、重要な指標なのですが、
新薬の承認審査には適用されません。
これを適用してしまうと、ただでさえ、十年、二十年とかかる
新薬の開発プロセスが、二十年、三十年とかかってしまうからです。
重要性というよりも、実用性という観点から、長期生存率は、
承認審査の物差に使ってしまうと都合が悪いわけです。


クレスチンは第一世代のエビデンスに基いて
許可されました。 

第二世代のエビデンスで許可になった抗がん剤には、
強烈な副作用を伴うものが沢山あります。
がんは小さくなったけど、患者さんも耐え難い打撃を受けて
しまう、こういうタイプの薬が、承認されるのです。

第三世代は、第二世代への反省から生まれたものです。
80年代の終わりには、欧米では縮小効果で見てはいけない、
という説が強くなりましたが、日本で延命効果が主流になるのは
21世紀に入ってからです。 延命効果といっても、1ヶ月とか
2ヶ月とかの延命効果で、エビデンスあり、となり
許可がおりてしまいます。  そんな簡単なものなら、
ANK療法なら楽勝にエビデンスが出せる、はずなのですが、
これが、そう甘くない仕組みになっております。
効果があるなし以前の問題で、
新薬の審査の仕組みに合わないのです。

さて、クレスチンは、経口で、飲みやすく、なんの害もなく、
安心して大量に服用されました。 患者さんの食欲が出る、
効いてるではないか、という現場の声もありました。
実際、臨床上の諸症状の改善で許可になったわけですが、
食欲が出る、というのも、立派な諸症状の改善です。

では、がんに効いているといえるのか。
そうなると、特に、がんそのものが小さくなる、とか、
患者さんが長生きする、とか、そういう効果は認められない
という意見が強かったのです。

そんなに悪い薬だとは思いません。
なんの害もなく、ほんとに食欲が出るのであれば、
患者さんが、自分でご飯を食べるというのは大事なことです。

ちなみに、抗エイズ薬の分野では、この臨床諸症状の改善が
復活し、患者の食欲が出る、その一点突破のみで、米国FDAが
承認した新薬があります。 抗がん剤では、もう、食欲増進だけで
許可になることはないでしょう。

また、健康なネズミに、クレスチンを与えると異常に餌を食べるので、
明確に食欲増進効果は証明されているのです、あくまで、ネズミの
話であって、人間にそのまま適用することはできませんが。

この薬、轟々たる非難を浴びた理由は、売上が大きかったからです。
年商530億円とか、よく書いてありますが、それは三共の売値ベース。
IMS統計という業界標準統計では、卸(問屋)の出荷価格ベースと、
NHIベース(薬価ベース)と二つの数字が載るのですが、問屋の出し値は
800億円台だったと思います。 今、IMS社と契約しておらず、
統計数字を見れないので、正確にはわかりませんが、薬価ベースで、
1000億までいかなかったものの、900億に近かったと記憶しております。
記憶違いがあるかもしれませんが、とにかく、巨額の健康保険料を
食っていたのです。  

また、世界中で承認しているのは、日本だけである、というのも
非難の理由の一つでした。 日本の英断で、素晴らしい薬を認めている、
のであれば、堂々と誇りに思っていいのですが、なにせ、この薬、
中身は、サルノコシカケの一種です。 キノコ、なのです。 
霊芝もサルノコシカケの一種ですが、あれは健康食品もしくは、漢方です。

しかも、タンク培養ですから、自然に生えているのとは随分と違うはずです。
栄養豊かな培地の中で、「成長モード」で、早く増殖するキノコの菌糸体です。
昔から、キノコを食べたり、毒を取ったり、薬にしたりすのは胞子体です。
それも厳しい環境の中で逞しく成長したものが、高価な漢方として
使われるのであって、楽勝、成長モードの菌糸体は、これといった
特殊な分泌物も出しません。 (菌は環境が悪くなると、色んな分泌物を
出し、それらが薬の候補となっていきます) 一応、菌糸体に含まれる
ベータ1−4Dグルカン、、、 という結合形式に、免疫賦活作用がある、
という話になってますが、まあ、所詮、キノコです。 それで、がんが
治る、ということはないでしょう。 

アマゾンなどから、8000種の毒キノコ(あと、カビも含まれます)を集めた
ビジネスの話をチラリと書かせていただきましたが、これ、英国のXENOVA
という会社がやったものです。 8000種といっても、同じものを何度も
取ってしまうでしょう、と、普通の質問をしたところ、これを見ろ、と、
色んな形やら色やら、胞子体なり胞子なり、ド派手なショーを見せて
いただきました。 目で、見て、明らかに違うものと、確認できるのを
集めるんですね。 SF映画で見るより、バラエティーに富んだ、変わった
コレクションを見せてもらいましたが、あれなら、中には、がんを叩く
物質をもってるのもいるかもしれませんね。 


かくして、莫大な健康保険のお金を使った日本最大の大型商品は、
再評価の結果、適用範囲を著しく制限されました。 


さて。ANK療法を何故、健康保険適用にしないのだ! と、たまに患者さんか
ご家族からお叱りを受けることがあります。 会社に言われても、会社が
認めるものではありません。 また、ANK療法は医師法の下で実施
されますので、会社が保険適用の申請をすることはできませんし、
高度先進医療の申請もできません。 お医者さんが、地道に
この療法を認めましょう、と、運動を広げていくしかないのです。
もちろん、会社として、お医者様方に、この療法を認めていただく
努力をするのは会社の仕事です。

一方、健康保険というのは、私も含めて、国民がお金を払っている
のです。 普段から、お金を払っているのです。  そして使える総額が
決まっているのです。 新しい治療法に保険を適用すると、他の何かを
削る、そういう関係になっています。 病気の人が減るような治療に保険を
認め、総費用を下げる工夫をしないと、予算の取り合いという構図に
あります。また、なんでこんな薬に保険を認めるの? 
と、国民には文句を言う権利と義務があります。