2017.7.20.


免疫治療の副作用で
問題になる自己免疫疾患。

これは、獲得免疫の暴走によって
起こるものであって、
自然免疫は、原則、自己免疫疾患を
起こさない、というのが前回の話でした。


自然免疫は、非常に精緻で、正確な
認識システムをもち、攻撃すべき標的以外を
攻撃することは滅多にありません。

獲得免疫は、しばしば、手当たり次第に
猛爆をかけ、一般市民たる正常細胞も
巻き添えにしたり、そもそも、正常細胞に
対して、徹底した猛攻をかけてしまうことも
あります。


免疫の基本は自然免疫です。

植物の場合、免疫とは言わないですし
細菌類の防御システムも免疫という
言い方はしませんが、植物や細菌類の
生体防御システムは、自然免疫に
類似しています。
動物に関しては、全ての種が、
自然免疫を備えています。

獲得免疫は哺乳類特有のもので
なくても生きていけるもの、です。

獲得免疫系のT細胞が成熟しない遺伝病の方は
ウイルス感染と真菌感染に脆弱になりますが
原核性の細菌や、がんに関しては
特に顕著な影響は見られません。

自然免疫系のNK細胞が成熟しない遺伝病の人は
まず生まれてきませんし、過去、数例のそれらしき報告が
ありますが、ほどなく死亡、とされています。

T細胞が成熟しない実験用のマウスやラットは
世界各地の研究室の中を走り回っていますが
NK細胞が成熟しないネズミは一匹もいません。
生まれてこないのです。

自然免疫なき生き物は存在できないのです。

獲得免疫の発動は自然免疫がコントロールしています。
樹状細胞の研究にノーベル賞が授与されましたが
自然免疫に属する樹状細胞が、感染症を認識し
獲得免疫系のT細胞やB細胞に発動を促す
というメカニズムの解明に対する評価です。
(がんは関係ありません)


体の中に、がん細胞が発生する。

世の中には、細菌とか、ウイルスとかが
うじゃうじゃいる。

こんなことは「わかっていること」です。

そして、がん細胞特有の細胞表面の「模様」を
数億年という時間の単位で、認識し、排除してきたのが
NK細胞です。 いるのがわかっている相手に対して
徹底して、標的の特徴を「事前に調べ上げ」
増殖してくれば、「いきなり攻撃」できるように
なっているわけです。

細菌やウイルスに関しても、特徴的な構造物があります。

樹状細胞は、細菌やウイルス特有の共通構造、つまり
細菌だったら、みんなもっているもの、
ウイルスの場合は、みんなもっている、というのは
ないのですが、RNA二本鎖ウイルスだったらもってるもの、
とか、いくつかのウイルスのグループごとに
特徴的な構造があるので、これを認識するわけです。

細菌には、細胞壁があります。

細胞壁には必ず存在する物質があり
しかも、動物の細胞には存在しないのです。
私たちの目鼻や口の中など、体外から細菌類が
接触、感染しやすい部位では、細菌類特有の
細胞壁を特異的に分解する酵素が大量に
分泌されており、たちどころに、分解して
しまいます。 細菌の側も、そうならない
策を講じてきますが、まず、細菌とか、ウイルスとか
フリーの状態で体外からやってきたもの
口の中に入ってきたもの、などは、細菌やウイルスの
共通構造を認識し、分解する酵素によって、
バラバラにされます。

そのため、体内もそうですが、皮膚の角質などは
RNAの鎖をバラバラにする強力な酵素が存在しています。
通常、私たちが健康な状態で、未知のウイルスや菌に
接触しても、直ちに、ウイルスや菌共通構造を認識・攻撃する
「液性自然免疫」と呼ばれる酵素群によって、
あっという間に排除されます。


このように、自然免疫は、遭遇することがわかっている
相手に対して、即座に対応できるよう、事前にプログラム
されており、認識システムも攻撃システムも、徹底して
標的の特徴を精緻にとらえているのです。


がん細胞を標的とする場合は、NK細胞が、担当細胞であり
がん細胞表面の「模様」を精緻に認識・攻撃するため
原則、正常細胞を誤爆ということはやりません。


獲得免疫の場合、基本的な発動メカニズムが全く異なり
個々の細胞がもつ認識センサーも、はるかに簡便なものと
なっています。


(続く)