2017.2.6.



温浴療法が注目されている? らしいのですが。

聞きなれない名称ですね。
温熱療法とか、ハイパーサーミアというのは
一時は、各地で盛んに実施されていました。
ブームは去りましたが、
今でも、やっているところはあります。

お風呂につかって温めるだけのものを
特に温浴療法というのかもしれませんが
そこはよく知りません。


よく誤解されているのですが

「がんは熱に弱い」

本当にそうなのか。


確かに、がん細胞を培養して、温度を上げていくと
やがては死滅します。
そういう意味では

「高温に弱い」 とか
「高熱に弱い」

という言い方は間違いではないのでしょうが
それは試験管の中での話。

がん治療として考えると、がん細胞は、患者さんの体の中にいます。

「がんは熱に弱い」が正しいとすると、
「正常細胞も同様に熱に弱い」のです。

両者に差異は認められません。


つまり、体温をあげたところで
がん細胞だけが、都合よく弱ってくれたり
死んでくれたりすることはない、
ということです。

患者本人が生きている限り
がん細胞も生きています。


熱によって誘導される
ヒートショックプロテインが
がん細胞の表面にニョキニョキと
でてくるので、免疫細胞から
見えやすくなる、ということを
おっしゃる方もいらっしゃいましたが
正常細胞も、同様に、ヒートショックプロテインを
ニョキニョキと出し、免疫細胞からみると
異常細胞に見えてしまいます。

つまり、ほんとの敵がどこにいるのか
わかりにくくなることはあっても
がん細胞だけに特徴的な目印が
でてくるのではない、ということです。



ウイルス感染の場合は、体温を上昇させることで
ウイルスの増殖にブレーキをかける効果を期待できる
ことがあります。 
ただし、それは増殖スピードが
早い場合です。

かなり悪性度の高い進行性固形がんなら
10日に1回くらいのペースで細胞分裂します。

ではインフルエンザウイルスはというと
8時間くらいで、感染した細胞から、100〜150倍とかに
増殖して、飛び出してきます。
つまり24時間で、100万倍とか300万倍とか、
そういうレベルの増殖ペースです。
10日もフルスピードで増殖し続けることは
実際には、あり得ませんが
もし増え続けるものと計算すると、
2日で1兆個、3日でもう100京個
この時点で、一人の人間の全細胞数を遥かに上回っていますので
そんなに増えることはあり得ないわけですが、
10日となると、10の60乗個。 

これ 1兆 x1兆 x1兆 x1兆 x1兆 個となります。

この間、極めて増殖速度の速い進行性固形がんは、2個に
数が増えています。

これ位、増殖速度が違いますので、高熱による影響も
全く違ってきます。

がんの場合、多少、高熱がでたからといって、それで
がん細胞がダメージを受けることはありません。

ANK療法では、点滴の度に高熱がでますが
体を冷やします。 体温を上げておくことに
意味はないからです。
かといって、解熱剤は免疫抑制作用がありますので
物理的に体を冷やすのです。

強い免疫刺激には、発熱を伴いますが
発熱がイコール免疫刺激なのではなく
免疫刺激がないのに発熱することもあります。
たとえば、コロイダルヨウドはただの殺菌剤で
飲むと高熱はでますが、免疫刺激はありません。

また、熱がでるから、がん細胞がやられるのでは
ありません。 こういう作り話が蔓延していますので
ANKによって、熱がでるので、がんはやられるんですよ!
という風に宣伝した方が、ひっかかる患者さんも
いらっしゃるのでしょうが、うちは、まじめなので
体温あげても、免疫はあがりませんよ、
がんはやられませんよ、なので、
熱がでてきたら、体冷やしてください、と説明しています。
平熱よりも、体温をさげるのではありません、でてくる熱を
素早く逃がしてください、ということです。


温熱療法といっても、80度Cとか、がん細胞を
「焼く」レベルの高温で、傷害するものもあります。
この場合、正常細胞も多くが巻き添えを受けることも
問題ですが、熱が素早く拡散すると効果がでにくいので
血流が多いところはダメ、とか、様々な制約があります。

80度Cまであげていっても、熱が拡散すると効果が
でにくいのです。

さて、インターフェロン製剤の臨床開発をやっていたころ
インターフェロンαとか、インターロイキン2とか
様々な免疫刺激物質を、患者さんに投与する実験が
世界各地で行われていました。
少量では効果なく、大量投与するのですが
異常な高熱がでます。
ところが、単に、体温が42度Cに達し
そのレベルの体温がしばらく続いた、
というだけでは、がんの治療効果は表れません。
結局、ある程度、安全な、といっても
副作用はでるのですが、がん治療として容認できる
範囲の副作用に投与量を抑えていくと、高熱は
でますが、顕著な、がん治療としての効果は
見えなくなってきます。
こうした実験が繰り返されていましたので
体温を上げれば、がんが治る、という話は
それは何かの勘違いで、周辺正常細胞も
死滅するのを承知のレベルの熱をかけるもの以外は
治療と言えるものではない、と考えられます。

正常細胞にダメージを与えずに
がん細胞だけを死滅に追い込む
これを「熱」でやるのは無理で
やるのであれば、正常細胞もろとも
がん細胞も死滅させるしかありませんが
そうなると、かなりの副作用を覚悟して
やる必要があります。


では、温熱療法は全く意味がないのかというと
以前、各地で盛んにやっていたころ、
よく温熱療法の施設から、がん患者さんの
紹介をいただきました。
体が傷んでいる方に、温熱療法を施し
滞っている体液の循環を取り戻すとか
冷えている体を温めるのは、患者さんにとっては
抗がん剤の苦痛を和らげることになる
というのが、そうした施設がおっしゃることで
ただ、治療効果はないから、がん細胞をやっつける、と
なると、ANK療法をご検討されては、と患者さんに
勧めていたそうです。

体調がよくなる、とか、心地いいなら、それは大切な
ことですね。 

ただ、がん細胞を死滅させるとなると
かなりの苦痛を伴うレベルで、熱をかける必要があります。

また、体温を高めると免疫があがる、という話も
よく聞きますが、がんを攻撃する免疫、がん免疫とか
腫瘍免疫といいますが、体温をあげても、特に
活動レベルが上昇するということはありません。


マイルドな温熱療法は、体調を整えるもの、心が和らぐもの
と考えております。