2017.3.1.



「ためしてガッテン」という番組について
いろいろと聞かれるのですが、すみません、
「見てません」 とお答えしています。

あの番組を見たことはありますが
問題になっている放送回については
見ていません。

知らないのに、勝手なことは言わない

当然ですよね。

このブログに何か書かないのかと
言われるのですが、それには、まず見ないと
いけないですし、この番組の件については
特にコメントする気はありません。



ただ、日ごろのメディア報道について
感じるところは多々あります。



免疫細胞療法も、昔から、まあ、いろいろと
悪口、誹謗中傷の類を受けてきましたが
悪く言う人に、ほぼ共通しているのは

「ろくに知らない人」 です。

まともな知識もないのに
勝手に悪口を言ってはいけませんよね。



残念ながら、マスメディアの論評にも
この手のものが多いです。

何も知らないなら批判してはいけません。
当たり前です。

で、どういうことが起こってきたかと言うと
ごく一部の人の話を、大手メディアが、
大々的に報道する、
ということが繰り返されてきました。


知らないなら、誰か専門家の意見を紹介する
というのも已むをえませんが、
なら、異なる意見も両論併記するのが筋でしょう。

あとは、見た人、自分で考えてね、と。


昨年後半から目につくのは

「免疫チェックポイント阻害薬は
初めて有効性が確認された免疫療法」

という救いようのない無知に基く
誤認です。

大手メディアが、こんなデタラメな報道を
してはいけないでしょう。

ANK療法の臨床試験のデータとか
米国で政府承認を取得している免疫細胞療法や
有効性を確認した大規模臨床試験などを
引っ張り出さなくても、
ごく当たり前に、
日本の標準治療、健康保険適応で受診できる
抗がん剤の一部のものの添付文書に、
明記されている事実があります。


作用機序 : NK細胞の傷害活性を高めることで抗腫瘍効果を発揮する


免疫チェックポイント阻害薬より、十数年以上前に承認され
遥かに幅広く使われてきた抗がん剤の添付文書の文言です。
(大分、カットしてます)

これが、免疫療法でなくて、なんなのでしょうか。

ADCC活性により、体内のNK細胞の攻撃力を高めて
抗腫瘍効果を発揮する、こんなのは当たり前どころか
米国で新薬開発の際に、
最優先課題として開発されてきたものです。
残念ながら、ADCC活性をもつ候補物質を
みつけるのは容易ではないため
ADCC活性をもたないタイプのものが多数、
上市されていますが
少なくとも、免疫細胞へのダメージがない、
免疫を温存する抗がん剤が、
大量に承認され、
従来型の殺細胞性の抗がん剤を
金額ベースではとっくに上回っています。
これ、欧米の話です。

日本は、世界でもポツンと取り残された
殺細胞性の抗がん剤、免疫細胞にダメージを
与えてしまう抗がん剤が圧倒的に使われている
先進国の中では、唯一の国です。


標準治療に組み込まれている抗がん剤に
はっきりとNK細胞を手伝うことで抗腫瘍効果と
書いてあるのですから、
免疫チェックポイント阻害薬が
初めて有効性が確認された、、、 
というのは
反論されたら一発轟沈の無謀な記事という
ことになります。

それも「夢の新薬」などと、いい加減なことを
言いすぎるので、患者さんが、投与してもらえれば
がんが治るんだ、と信じて、で、リンパ球バンクも
免疫とか言ってるから、同じものをやっているんだと
信じて、がんを治してください、とやってこられるのです。

え? いや、夢の新薬じゃないですよ、、、、

とんでもない副作用があるし、、
肝心のNK細胞にはあまり作用しないので
効果にも限界があります、、、

具体的な効果や副作用について
詳しく話をすると、がっかりされます。


ためしてガッテンの問題の回は
見ていないのですから
比較してはいけませんし
問題の質は違うようですが、
「夢の新薬」報道は
大いに問題でしょう。 
患者さんに勘違いを与えて
いるのですから。


ADCC薬というのは、体内のNK細胞が
がん細胞を傷害するのを手伝うものですが
残念なことに、がん患者さんの体内のNK活性は
相当、低下しています。
だから、がんになっているのですが。
そのため、低いなりにも、多少は
NK活性を、高めに維持している患者さんには
この手の薬は、無茶苦茶、よく効きます。
殺細胞剤よりはるかに切れ味よく
再発しないケースもあります。
一方、殺細胞剤でNK活性が低下し過ぎていると
ほとんど効果がみられません。
このような世界標準の薬を
日本では、ほとんどの部位で保険適応にせず
しかも、殺細胞剤と併用されるケースが多い
というどうしようもないことが
行われています。

NK細胞にがん細胞を殺してもらう薬と
NK細胞を傷つける薬を併用して治験をやるのですから
治験の設計自体に、何の科学的根拠もありません。
それで治験の結果だけが正しいと信じる一部の
人々の声に押され、日本では、ADCC薬が
欧米ほどには真価を発揮できないでいます。

こういう基本的なことを知らないで
免疫療法批判記事を書いてはいけないです。


免疫細胞療法は、エビデンスがないように
非難されますが、それも知らないから
そうおっしゃってるのです。
とはいえ、国内では、大規模な治験が実施されていない
それは事実ですね。
その理由は、法制度とファイナンス上の問題であって
効果のあるなしとは関係がありません。

旧薬事法下では、
「細胞を体外培養してから本人に戻す」という
医療行為について、
企業が健康保険適応の申請を行うという
ことができなかったのです。
法令と科学の進歩が合わないというよくある話です。
それで、医師法に基き、自由診療で実施されてきたのです。
効果があるかないかは、何の関係もありません。
やっと薬事法大改正により、法の名称も、薬機法になり
適応申請の法的障害が解消されてきたのですが
そうはいっても、スポンサーの問題があります。
莫大な治験費用をだれが負担するのか。
工場で大量生産する医薬品なら、政府承認を取得して
大量に販売すると莫大な利益を生みます。
その点、細胞そのものを個別に培養していたのでは
原価率が高すぎて、大企業のソロバンにはなかなか合いません。

リンパ球バンクが、100億円自由に使っていいなら
ANK療法の保険適応取得は可能です。

ただし、100億円というのは、この手の申請には
非常に「小さ過ぎる額」です。

対象疾患を希少なものに絞る必要があります。

すると、100億円投資しても、どこまで回収できるか、、、
という計算を、医薬品メーカーはするので、
そんなら、普通の医薬品や、むしろ、がんワクチンの方が
医薬品として扱えるので、承認取得後の収益率が高いぞ、、、
となるのです。 

こういう業界構造があるので、圧倒的な科学的根拠や背景が
あるにもかかわらず、免疫細胞療法の大規模治験の
組織化は簡単ではないのです。